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4.今年の同窓会
「あれ、みっちゃん?」
今年の同窓会でも真っ先に声をかけてきたのは恵子だった。でも前回とは少し反応が違う。
「何だか……雰囲気変わったわねぇ」
路子は微笑んで首を横に振る。
「なぁんにも変わってないわよ。相変わらず毎日パート三昧だし」
だが前回全く声をかけてこなかった男性陣が路子の周りにわらわらと寄ってきた。
「あれ? 笠井か? 何か雰囲気変わったな」
「三年前の同窓会来てなかったよな?」
「そうそう、来てたら絶対覚えてるはずだもん。モデルみたいじゃん」
手放しの賞賛に路子は大いに驚く。
(私、そんなに変わったのかしら。だとしたらあの娘たちのおかげね)
「笠井さん?」
(ん、この声……)
くるりと振り向く。
「倉橋君!」
そこには倉橋亮介その人が立っていた
「お久しぶり。三年前の同窓会でも話しかけようと思ってたんだけどいつの間にかいなくなっちゃってただろ? だから今年は絶対に捕まえようと思ってさ」
そう言ってはにかんだように笑う。二人は近況を語り合った。そして担任だった先生のスピーチを機に話題は中学当時に遡る。
「この前の同窓会もそうだったけど、転校前の最後の登校日もずいぶん笠井さんのこと探したんだよ」
思いがけない言葉に路子は倉橋の顔をまじまじと見つめる。
「私を?」
倉橋君は頷いた。
「連絡先を聞こうと思ってね」
「ああ、あのね、実は……」
当時鼻の頭にできた大きなニキビが恥ずかしくて逃げ回っていたのだと告げると倉橋君はひとしきり笑った後でこう言った。
「今度こそ、連絡先聞いてもいいかな?」
路子は頬を赤らめて頷いた。
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