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5.いつかまた
その夜私たち家族は遅くまで話に花を咲かせた。満足して部屋に戻った私はすぐに眠りに落ちる。そして夢を見た。最初はいつものバーベキューの夢かと思った。でもどこかいつもと違う。そうか、夢の中の私は小学生じゃない、今と同じ高校生だ。隣にいる姉も大学生。目の前にいる母さんはいつもの夢に出て来た母さんよりもずっとキレイだ。母さんの隣には変わらぬ姿の父さんがいる。そして母さんを挟んで父さんの反対側にいるのは……。
(倉橋氏だ!)
昨夜、同窓会で撮ったという写真を母さんに見せてもらっただけだが間違いない。少し垂れ目で優しそうな顔をしているこの男性は倉橋氏だ。
母さんは二人の男性に挟まれて嬉しそうに微笑んでいる。父さんも倉橋氏も笑顔だ。隣にいる姉さんも大きな口を開けて肉を頬張りながら笑っている。私はその様子を見て何だか無性に可笑しくなって大声で笑った。涙が出るほど笑った。そして私は自分の笑い声で目が覚めた。
(夢かあ)
家族でバーベキューをするいつもの夢。切なくて儚いいつもの夢。でも今日の夢は少し違う。いつも感じる心が凍りつくような悲しみはない。私は自分の胸にそっと手をあてた。心がポカポカと温かい。
(いつかまたバーベキューをしよう。父さんはいなくなってしまったけど。でも、もしかしたら三人じゃなくて四人でバーベキューできるかもしれない)
目覚まし時計を見るといつも起きる時間より一時間程早い。よし、今日からは自分でお弁当を作ろう、そう決心した私は大きく伸びをすると勢いよくカーテンを開けた。
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