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1.同窓会のお知らせ
学校から帰り郵便受けを見ると何通かのDMに紛れて母宛の往復ハガキが入っていた。夕飯の支度をする母の背中に声をかける。
「母さん、何か来てたよ」
その辺に置いといて、という母に向かいハガキをひらひらとさせた。
「同窓会のお知らせだよ! 三か月後かぁ。結構先だね」
母が苦笑しながらこちらを見る。
「こらこら、勝手に人の郵便物見るんじゃないのよ。それより早くお弁当箱出しちゃって。あんたも今年からもう高校生なんだからそろそろお弁当ぐらい自分で作りなさいよ。お姉ちゃんもそうしてたんだから」
私は、肩をすくめはぁいと返事をすると鞄から弁当箱を取り出し流しに向かった。
「ごちそうさまでした」
そう言いながら母に弁当箱を手渡す。今年大学二年になる姉は料理好きで高校になると自分のお弁当は自分で作っていた。ここは早々に撤退するに限る。
「ハガキここ置いとくからね」
そう言ってダイニングテーブルにハガキを置き自分の部屋に行こうとする。母は置かれたハガキにちらりと目を遣るとため息混じりに呟いた。
「今回は止めておこうかしら」
そういえば三年前母が同窓会に出掛けていった覚えがある。私は足を止めて母に尋ねた。
「母さんの学校よく同窓会やるんだね。確か三年ぐらい前にも同窓会なかったっけ」
「今年で中三の時担任だった先生が定年だから、そのお祝いも兼ねてってとこじゃないかしらね」
ふぅん、と返事をして私は自室へと向かった。制服を脱ぎ部屋着に着替えると夕飯の支度を手伝うため再び台所に向かう。するとガチャリと鍵を回す音がして扉が開いた。姉が帰宅したようだ。
「ただいま。お腹空いちゃった」
私は姉の持つ小さな紙袋を見逃さなかった。あのロゴは!
「あ、お姉ちゃん、ずるい! 新色買ったの?」
姉はふふんと得意気に紙袋の中身をテーブルの上に置く。それは私と姉が大好きなコスメブランドの新色リップだった。学生にも十分手の届く値段ながら品質もいいと評判がいい。
「いいなー!」
私と姉が夢中でコスメ談義を始めるのを見て母が苦笑する。
「二人ともホントに好きねえ。そんなにおめかししてどうするのよ」
姉がすかさず反論する。
「何言ってるのよ、母さんももっとお手入れしなよ! まだ若いんだからさぁ。ほら、そろそろいい人見つけないと」
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