学園祭

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「レ、レルバ兄様」 兄様?ってことは、あの人は王子か。 キッドはついと顔をそむけるが、来てくれたのが嬉しいのかにやけている。 隠しきれてないぞー。 「来いよ王子!」 キッドが跳躍し、一気にキーリィとの距離を詰めた。 そのまま剣を振り下ろすキッド。 キーリィが剣を横にして受け止めようと構える。 「や―――あっ!!」 キッドが剣を叩きつけると、  ぱ きぃっ キーリィの剣が、折れた。 「キ、キーリィの剣が折れましたぁ!」 「な、」 「僕の勝ちだ!」 キッドが剣の切っ先をキーリィの首筋にぴたりと沿わせ、キッドがドヤ顔で言った。 一瞬おいて、わあ、と声があがる。 「見事だ!キッド・クレイ・アートイスの勝利!」 「見応えのある試合でしたね!」 キッドのくせに、けっこうカッコいい試合だった。 結界から出てくるキッドのところに、さっきのレルバ王子が向かった。 「世間知らず馬鹿、どうだ僕の剣術は!…て、レルバ兄様!」 「やあキッド!」 キッドがレルバ王子に気付いた。 「ナトゥア家のソルナ嬢だね?僕は第二王子レルバ。よろしくね!」 「ど、どうも」 ノリ軽いな。 やはりこの国の王子は王子らしからぬ、というか。 「さっきの試合、よくやったな」 「ふふん、僕だって頑張ってるんです、兄様みたいになりたくて!」 「フン、あの程度でいい気になるとは」 キッドとレルバ王子が表情を強張らせ、その後ろから20代くらいの男性が姿を現した。 国王に似ている。 「サ、サイロス兄様」 「だからガキだと言っている。やはり、お前たちに王位継承は無理だな」 「そんな!」 この人が第一王子らしい。 確か、身内、特に兄弟に厳しくて、文武両道の天才だとミルバで噂になっていたな。 この人は父親似かな。 一応、挨拶しておくか。 「初めまして。ソルレーナ・フォン・ナトゥアと申します」 サイロス王子が私の方を向いた。 「ふむ、末弟が世話になっている。こいつなど、相手にしなくていいのだぞ」 め、めっちゃ見下してる。 「キッド王子!」 「げっ!」 サイロス王子の後ろから、ガタイのいいお姉さんが出てきた。男に見間違えそうだ。 「この一週間、全く剣のお稽古をされておられませんよ?どこでうつつを抜かしていたのです!」 「しゅ、首都でマシュナ退治をしていたんだ!民の安全を守るのは王子のつとめだぞ!文句でもあるのか!」 キッドがレルバ王子の後ろに隠れながら反論する。 どうやら剣術の先生のようだ。 「ええ、あります!私には国王陛下よりキッド王子に剣術を教えよとの仰せをつかっております!つまり、義務が課せられているのですよ!そこのあなたも、王子を誑かさないでください」 え、私?
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