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「さあ、次でいよいよ準決勝出場者が全員そろいます!では第四試合め!七年生、ダンク・フォン・ナトゥア対、八年生、スコルヤ・リグ・ミサイドです!」
ダ、ダンク兄様!?
って、そりゃそうか。
あの人、運動ならなんでもできるからな。
「ダンクは去年、一昨年と宿題が終わらず教師から許可が下りなくて出場できなかったが、今年は宿題を終わらせ、予選を楽々と通過して本選出場だ!」
兄様…宿題やれよ…。
「そしてミサイドは、なんと去年の優勝者!騎士候補にもなっている実力者です!」
優勝者対ダンク兄様かー、どっちが勝つんだろう。
「それでは、ようい…はじめ!」
始めの合図があったが、ミサイドが動かず口を開く。
「この俺にナトゥア家ごときが勝てる思うか?フン、思い上がると痛い目にあうぞ」
「それはこっちの台詞だが」
確かに。
「今年の花鳥風月の月に、ナトゥア家の醜女が選ばれたらしいな!ハッ、花鳥風月も落ちたものだ!」
「「あぁん?」」
兄様とハモった。
ったく、どいつもこいつも田舎モンだと馬鹿にしやがって。
ダンク兄様、やっちまえー!
「うちの天使が醜女?お前、目がどうかしてるんじゃないのか?今訂正しないと、ナトゥア家と月の使徒全員に殴られるぞ」
「ハッ、馬鹿にしやがって」
ダンク兄様が後悔するなよと言いながら剣を正面に構えた。
「醜女を兄弟にもって可哀想にな」
「お高くとまりやがって、おめでたい頭してやがる」
両者の額に、ぴきりと青筋が浮かんだ。
「こんっの田舎者がぁぁぁ!」
「醜女なわけあるかぁぁぁ!」
両者が同時に地を蹴り、カキィン!と剣を合わせた。
二人がお互いに剣の刃先を届かせるべく力をいっぱいに込める。
ギリ、と音をたて、二本の剣が二人の力に耐えているのが分かった。
きれいな剣の表面が、汗の浮かんだミサイドと、にっと笑ったダンク兄様をうつす。
じりじりと、二本の剣がミサイドの方に傾く。
頑張れ兄様ー!
「ちぃっ!」
ミサイドが退く。
「ミサイドお坊ちゃん、さっきまでの勢いはどうしたんだ?」
「黙れ!」
ミサイドが私のしょぼすぎる動体視力では到底見えないような動きでダンク兄様に迫った。
「思考加速」のスキルを使えばかろうじて見える。
あらゆる角度からの剣に、ダンク兄様は余裕の表情を崩さず完璧に対応してみせた。
「おぉ!」
一昨年の優勝者を上回るダンク兄様に、観客の注目と感心が高まる。
むっふっふ、すごいだろ、うちの兄様!
勉強面はアレだけどね!
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