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「すごいすごい、すごいです!ダンクくんがミサイドくんを引けをとっていないどころか、優勢です!これは新勢力か!?」
「く…図に乗るなよ!」
ナレトーニ先生の実況に、ミサイドが眉間に深いしわを寄せる。
「次はこっちから行くぞ!」
ダンク兄様がミサイドを上回る速度でミサイドに迫った。
速さと重さのある剣に、ミサイドが焦りの表情を見せる。
連続して剣のぶつかる音が響き、その度にミサイドが押されている。
そしてついに、ミサイドの剣が重みに耐えかねて、持ち主の手から離れて放物線を描き、地面でカランと音をたてた。
その一瞬あと、ダンク兄様がミサイドの鳩尾を蹴り、ミサイドがあおむけに倒れたところで剣の切っ先を首に突きつける。
勝敗が決した。
「ダンク・フォン・ナトゥアの勝利だ!」
場が観客の拍手に包まれる。
「ソルナのお兄さん、すごいっすね」
「あねごの兄君でしたら、あにきとお呼びするべきでしょうか?」
「それはやめよう」
と、ダンク兄様が私を向いた。
「見てたかソルナ!仇とったぞ!」
カタキて。
ん?
三人の男子が結界の中に入った。
あ、あの三人、前に小麦粉を買ってきてくれた変態集団の人達だ!(←ひどい)
「我ら親衛隊に、月の使徒を代表して殴らせていただきたい」
「ぜひとも!」
「いいぜ」
おい兄様。
よかないだろ。
三人のうちの一人が剣を振り上げたところで、
「ストーップ!」
止めに入った。
『サリエル様!』
三人が跪く。
それやめてマジで、ねえ。
「三人がかりってほんのちょっとかわいそうな気がせんでもないから、私にやらせて」
『は、仰せのままに!』
というわけで、拳を構える。
うーん、殴打つけると、今の私の攻撃力じゃ文字通りイチコロになりかねないから、ちょっとした慈悲というか私のお情け、思いやりという素晴らしい精神で遠慮しといてやろう。
さあいくぜ!
「そいやぁ!」
ドゴッ
おう。
結構な音がした。
「ぐハッ!?しょ、少女のパワーじゃ無…」
ミサイドが気絶する。
コイツ強いんじゃないの?
ってか、強いから、私が割と本気で殴っても大丈夫なんだね。
ついでに鑑定すると、MPが0になっていたので結界の効果が発動したようだ。
私は無言でふっと笑ってVサイン。
月の使徒と思しき生徒や観客たちが喜びの悲鳴に近い声をあげた。
まだ慣れないや、こういうの。
結界から出て、再びみんなと合流する。
「すごい人気っすねー。ふ、さすが」
「やめてくれファレア」
次は準決勝か。
楽しみだなー!
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