学園祭

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「受けてみろ!」 そう言って兄様が地を蹴る。 そのまま、剣を構えたルードスさんに斬りかかった。 上下左右の四方向だけではとても表せない角度から、ルードスさんにダンク兄様の剣が襲い掛かる。 剣を滑らせてよく防いでいるが、さすがに防戦一方だ。 「まだまだァ!」 兄様の剣のスピードが上がる。 それに伴って、ルードスさんの速度もあがるが、同時に防ぎきれない剣撃の数も増えていく。 「く…!」 小さな傷が増えていき、ルードスさんが顔を顰める。 と、キィンとひときわ大きな音を響かせて、ルードスさんが何かの構えをとった。 ルードスさんの表情が変わる。 「『返り波』!」 ルードスさんはそう言い、再びダンク兄様の攻撃を受けはじめた。 が、さっきまでとは少し違う。 受け流すたび、ほんの浅くではあるが、ダンク兄様が傷を負っていく。 ダンク兄様は一度離れ、間合いをとった。 「スキルか。やるな」 「友人に手伝ってもらったんです」 そう。 スキルを持っている子供は稀だが、一応いないこともない。 剣術の中には、私なら「跳び蹴り」のように、練習して獲得できる技がある。 ルードスさんは、マシュナ退治のときに三つのスキルを獲得した。 一つが今の、攻撃を受け流すと同時に相手を斬る『返り波』。 それと、相手の傍を駆け抜けると同時に相手を斬る『袖一閃』、回転して二度ダメージを与える『蛇の目傘』の合計三つだ。 これでルードスさんが優勢に…! と思ったが、そう甘くはなかった。 「じゃあ、俺も使わせてもらうぜ!『雀蜂三段』!」 兄様がフ、と消える。 いや、消えたんじゃない。 ものすごい速さで、ルードスさんの方に跳んだんだ。 「はぁあっ!」 「ぐぁ!」 三連続の突きを受け、防げなかったルードスさんは後ろにバランスを崩すが、その勢いで後ろに転がり、立ち上がって剣を構える。 「こんなのもあるぞ!『返し刃』!」 ダンク兄様が、さっきと同じくらいの速度でルードスさんに一直線に迫る。 ルードスさんが受けるべく剣の角度を調整する。 これなら受けられる! ダンク兄様が剣を振り上げ、    ヒュンッ また消えた!? いや、横だ!横に移動したんだ!  ドスッ! 予想外の方向からの剣に、ルードスさんが数歩分横にとばされる。 一度直進してから横に跳び、相手の意表を突いて攻撃するスキルなんだ。 「続けて『風追狼』!」 「うぁ!」 勢いを無視するかのような、急な方向転換からの追撃にルードスさんが倒れるが、ふらつきながらも立ち上がる。 …どうでもいいけど、スキルの名前が…ネーミングセンスがちょっと。 もう少しどうにかならなかったのかな。 「そろそろ終わらせるぞ!『返し刃』!」 ダンク兄様が再び迫る。 が、ルードスさんは剣を防御のために構えず、切っ先を地面に向けて目を閉じている。 何してるの、兄様来てるよ!? また、兄様がさっきとは別の方向に跳んだ。 「もらっ―――」 ルードスさんが、ダンク兄様がいる方とは少しズレた方向に一歩踏み出す。 もうちょっと横だよ!そこじゃ無、 「『袖一閃』!」 駆け抜けたルードスさん。 「おっと!?」 攻撃から防御にいきなり切り替えたことで兄様がバランスを崩し、動きが一瞬止まる。 そこで、ルードスさんがかっと目を開けた。 「『風追狼』!」
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