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目にもとまらぬ速さで、追撃。
「ぅおわ!」
兄様はまともにくらった。
あの追撃のスキル、ルードスさんは覚えてないはずなのに…まさか、兄様の動きを見て覚えた!?
「はぁ、はぁ…い、一撃入った」
肩で息をしながら、ルードスさんが剣を構えなおす。
これはさすがの兄様でも気絶したんじゃ…!
と思ったのだが、兄様はすっくと立ちあがった。
「やるな。大分HPを持っていかれたぜ」
「嘘だろ…」
兄様ピンピンしてますね、ハイ。
「じゃあ、俺のとっておきの一つを見せてやる!」
兄様が剣を構える。
「『雀蜂五段』!」
風のようになめらかに五連続の突きを繰り出した。
ルードスさんの姿勢が後ろに傾く。
「『淡百合』!」
二度の浅い剣のあと、高威力の突き。
「ぐフッ!」
ルードスさんが後方にとばされる。
ダンク兄様が高く跳んで剣を振りかぶる。
「そして、これがとっておきだ!『堕天一閃』!!」
ルードスさんが剣で受けた。
ドォン!
物凄い力が地面に衝突し、一時的に砂嵐が舞い上がる。
「ど、どうなったのでしょうか?」
砂煙が晴れると、技の衝撃でできたのであろう大きな穴からルードスさんを兄様が引き上げているのが見えた。
ルードスさんは気絶していた。
「ふぅ…」
剣を支えにして、兄様が立ち上がる。
「ルードス・ルーア・ライグンツイ、気絶!勝者、ダンク・フォン・ナトゥア!よって、優勝は、ダンク・フォン・ナトゥアです!」
わぁぁああぁっ!!
観客の歓声と割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「お疲れ様、ルードスさん」
「あぁ、ありがとう。悔しいが」
治療してもらって帰ってきたルードスさんを、みんなで拍手で迎えた。
と、キッドとルードスさんが顔を見合わせる。
「やはり頼むか」
「だな」
二人が私に頭を下げた。
え、何?
「「修行に付き合ってくれ!」」
…は?
「私をいたぶって経験値を稼ごうと?」
「いやそうではなくて」
「世間知らず馬鹿、お前強い魔物たくさん従えてるだろ?そいつらと戦わせてくれ」
あー、なるほどね。
ふむふむ、それはいい考えかも。
だって、絶対に二人ともうちの竜軍団には勝てないし、大怪我する危険もないからね。
「OK、領地が落ち着いてきたらいいよ」
そういえば、しばらく帰ってないなぁ。
ここのところ、マシュナ退治に忙しかったから。
みんな、元気かな?
「ソルナ」
ん?
名前を呼ばれて振り返る。
と、
「父上、母上!それに、ウルヴァ姉様にエーデル姉様!」
「久しぶりね」
母上がにこりと微笑む。
と、エーデル姉様がずいと前に出た。
「来年わたくしが入学してわたくしが後輩になっても、わたくしの方が年上で偉いのですわ!来年になってわたくしが入学したら、無礼な男どもから守ってあげますわ!」
「あ、はい、待ってますね」
私が飛び級で入学して、言いたかったであろうことをまとめて言われた。
「次は魔法部門だな。ソルナ、出るんだろう?」
「はい」
「見てるわ、頑張ってねソルナ」
「はい、ウルヴァ姉様!」
家族に見られているとなると、緊張するなあ。
「マシュナ退治の成果、見せてもらうわね」
「はい母上!しっかり見ててくださいね!」
私が首都でマシュナ退治をしてたことももう知ってるなんて、母上にはなんでもお見通しだなぁ。
よーし、頑張るぞー!
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