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「おかえりなさいませ
無事怪異を倒されましたか?」
玄関ホールのソファーでいつもの様子で待っていたリリアが出迎えてくれる
「いや、倒したというより成仏させたと言う方が正しいな」
「なんと…!!
悟様いつの間にそのような技術を?」
「いや、俺じゃない
広尾が怪異と話をしたんだ
そうしたら、怪異は成仏していった
詳しい話は後回しだ
それよりも重要なことがある
広尾、あの紙を出してくれ」
「……………………」
「広尾?」
「ッ!!…すまない」
そう言って、急いでポケットから先程の日記を取り出す
「広尾様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、少し疲れただけだろう」
「これを読んでからずっとこの調子なんだ
今は聞かないほうがいいのかもしれない」
広尾に聞こえないように言う
前に、広尾が初めて怪異と遭遇した時の話を聞こうとしたときに似ている
前よりは落ち着いてはいるが、あまり問いただしすぎるとまた、あの時みたいになりかねない
「そうですか
それでは、広尾様
その紙に書かれていることをお教えください」
「わかった」
日記のあらすじを今夜の出来事と交えて話す
「そんなことが……」
血が通わない人形のリリアは、人間のように顔が青ざめるということはない
それでも、表情や声色だけで十分恐怖や困惑が読み取れる
「これは、非常事態です
一刻も早くすべての元凶である怪異を何とかしなければ、
怪異も花紋病の患者も増え続ける一方ですから
ですが、今夜はゆっくりとお二人とも休んでください
疲れが残っていては、今後の活動に支障をきたしますゆえ」
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リリアにあぁ言われたが、どうしても寝付けない
ベットに寝転んで、何度か寝返りうったり、天井を眺めてみてもダメだ
ふと、日記の内容が頭の中を巡る
始めて見た怪異が仮に本当に"あの人"だったとして
一体なんのためにこんな事を?
「悲惨な死…恨みの力………
でも……あいつらだけじゃだめな理由がわからない
ハァ…わからないな」
調査を進めれば、会えるだろうか
会ってどうしようか
目的は?理由は?
聞きたいこと、言いたいことは山ほどある
だけど…だけど………
ー これ以上、怪異に、花紋病に関わるな
死にたくなければな ー
「んん゙………朝…か?」
どうやらいつの間にか寝ていたらしい
眠りに落ちる前に頭の中にこだました言葉
「死にたくなければ………ね」
「広尾、起きてるか?
朝食ができているぞ」
「すぐに行く」
「そうか」
短い返事が帰ってきて、足音が遠ざかっていく
「もし…俺がお前に出会わなければ…
今頃とっくに死んでいたんだろうな」
今、八ノ瀬館に、住み込みで調査を手伝い、
喋る人形に、心霊に関することを仕事にしている奇妙な男と過ごすうちに、
奇妙な感情が生まれつつあることに気づいた
うまく言い表せない、何か、理由もわからず心に深く根ざす感情
「これも…そのうちわかってくれれば、いいんだがな」
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