新たなる怪異

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M山麓公園 公園と言っても、周りに大きなマンションや住宅街があるわけではない 昼間でも人気の少ない公園は、夜になるとより一層人の寄り付かない、沈黙だけが存在する公園となる 遊具や植え込みなどの側に大量に生えている、場違いなオレンジ色の百合 様々な花の香りが交じっており、ユリ本来の匂いはわからないが、怪異がこの近辺を彷徨いている証拠だろう しかし、それ以外に何も見つからない よくある遊具や、公衆電話が佇むだけの公園に、怪異に関連するものは何一つなかった 「ここには何もなさそうだな M山道休憩場の方に行くか」 「そうだな」 ピロロロロロロロロ!!! 「「ッッッ!!!!?」」 車に戻ろうとした瞬間、鳴り響く公衆電話の呼び出し音に驚き、二人同時に振り返る 「一体誰が…?」 「このタイミング、怪異しかないだろう」 急ぎ足で公衆電話の中に入り、電話に出る広尾 ボックスの中は狭いため二人は入れないので、八ノ瀬は外で待つことにした 念の為、扉は開けたままにしておく 「もしもし?」 『ザーザーザー』 返答はなく、ノイズの音だけが流れてくる 「怪異なんだろう?一体何が目的だ」 『なぁ…………は…………か?』 ボソボソと男の声が聞こえてくる 「なんだと?聞き取れない、はっきり言え!」 『あんたは…好きな奴は、いるか?』 「は?どういう意味だ?」 『好きな奴はいるかって聞いてだよぉぉぉ!!!! 答えろよ!!!答えろよぉぉぉぉぉ!!!!』 突然、男は激昂し大声を上げる あまりの声の大きさに、思わず受話器を耳から離す 受話器の向こうから荒い息遣いが聞こえる もう一度、受話器を耳に当て質問する 「わけがわからない 質問の主旨を教えろ そうしたら答えてやらないこともない」 『いないならいい』 ブツン……ツーツーツー 恨めしそうな声を残して電話は切れてしまった それからいつまで待っても電話はかかってこなかった 「外まで音が聞こえていたぞ 何だったんだ、あれは」 「わからない だが、おそらく今の奴が今回の怪異だろう 先に進んだほうが良さそうだ」 電話ボックスを後にし、車に向かう 電話から聞こえてきた恨めしげな声が、耳に残って離れようとしてくれなかった 一体、奴の目的は何だったんだろうか
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