かつての同僚

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かつての同僚

M山頂上付近休憩場 M山道休憩場よりもさらに高所にあり、見晴らしも更に良い 山道が険しく、あまり人が来ないことから穴場スポットとして知る人ぞ知る場所となっている 一説によると、自殺者が最後に親しい人に電話を掛れるように、 こんな人気のない場所に公衆電話を設置しているらしい 「ん?誰かいるな」 公衆電話に最も近いベンチに誰かが座っている 二つある人影のうち、一つがこちらに気づいたのか、近づいてきた 「申し訳ありません この場所は今、警察による捜査中なので一般人の方は……あれ? あなたは…広尾さんですか?」 「お前は…中松じゃないか」 「知り合いか?」 「現役時代の後輩だ」 「中松 徹と申します はじめまして、えっと…」 「八ノ瀬 悟だ」 「ありがとうございます ところで、お二人はどうしてここに?」 礼儀正しく挨拶をした時とは変わって、好奇心が抑えらてない様子で聞く 「ちょっとした調査でな 俺の調査のついでに、こいつの仕事の手伝いをしているんだ」 「そうなんですか もしかして…森宮さんのことについてですか?」 広尾の顔が少しひきつったように見えたが、中松は気づいていないようだ 「いや、違う また別のことにいてだ」 「そうなんですか……僕はてっきり… 広尾さん、あなたが急に警察官を辞められると聞いて、僕すごく驚いたんです あなた程の正義感の強い方が辞められるなんて… 一体何があったんですか?」 「大した事情じゃないさ ただ、正義感が仇になることだってある それだけは覚えておけよ」 「は…はい…あの」 「そうだ、中松さん」 「はい、何でしょう?」 中松はまだ広尾に質問がありそうだったが、遮るように呼びかける 広尾が早くこの話題を切り上げたい様子に気づいていないようだ 「この辺りで失踪者が増えていると言う情報があったんだが、 あんたはそれに関する捜査をしているんだよな? 何かわかったこととかあるか?」 「え…えっと…」 「ちょっと、中松君 いつまで無駄話してるの?」 「あ、有村さん!すみません」 「ここは一般人立入禁止よ 記者だか野次馬だか知らないけどとっとと帰ってちょうだい って…広尾さんじゃない どうしてこんなところに? まさか、その隣の男と心中でもしに来たの?」
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