かつての同僚

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中松の上司らしき、中年で小太りの女性が厭味ったらしく言う 「いいえ、有村さん こいつは一種の仕事仲間です そこまで深い仲じゃありません」 広尾の言葉に棘がある ピリッと張り詰めた雰囲気があたりを包む 「あぁ、まずい」 「何がまずいんだ?」 「二人は犬猿の仲なんですよ 広尾さんが現役の時も、一目会えば口喧嘩が始まるんですよ その時は、森宮さんが間に入って止めてくれたんですが……」 男二人の心配をよそに、広尾と有村を包む空気はより険悪になっていく 「ふーん、それじゃ、あなたここに何しに来たの?」 「仕事ですよ、仕事 有村さん達の邪魔はしないので それじゃ」 「待ちなさい、こんなところに来るような仕事って何よ?」 「別に、怪しいことじゃありませんよ さっさと仕事に戻ったほうがいいんじゃないですか? あんた達二人以外に人員が見当たらないですよ サボってるのバレたら困るんじゃないですか?」 「チッ、相変わらず口の減らないガキだね こんなのの世話をしていた森宮さんの気が知れないわ」 「まぁ、あの人は物好きなんでね あぁ、でもあんたを好きになる程ではなかったですけど」 「うるさいわね!! あんたが森宮さんを語るんじゃないわよ! 偉そうにしてるけど、私の方が森宮さんとの付き合いは長いんだからね? ちょっと、人が話してる時に煙草を吸うなんて非常識じゃないの?」 「えぇ、知ってますよ 嫌ならさっさと戻ればいいじゃないですか」 フーと有村に向かって煙を吹きかける 有村の額に青筋が浮かぶ 「ヒエェ、有村さんになんてことを…」 中松が怯えた声で小さく漏らす 「広尾、流石にやりすぎじゃないか?」 「別に俺はわざとやってるわけじゃない ただ普通に吸った煙を吐いたら、その先にあいつがいただけだ」 「この…クソガキ!!! いい加減にしろよ! これ以上調子に乗ったら公務執行妨害で捕まえるわよ!!!?」 「勝手にどうぞ あんたみたいなヒス女の言うことを、本気で信じる奴が署にいればの話ですが」 「この……!!!!!」 有村の顔が真っ赤になっていく 言葉にならない怒りでモゴモゴと口を動かしている 「ひ、広尾、もういいだろ 行こう いつ奴から電話が掛かってくるかわからない」 「そうだな じゃぁな、中松捜査頑張れよ ついでに有村さんもな」 「待ちなさいよ!!! またそうやって逃げるっていうの? 警察官を辞めて逃げたみたいに!! それじゃ、あんたが森宮さんを殺したって自白してるようなものよ!!」 背を向けて有村から離れようとしていた広尾の足が止まる 「ヒィッ!!?」 振り返った広尾の鋭い目つきに有村が凍りついた さっきまで飄々と有村の言葉を流していた広尾の様子とは明らかに違う その目は怒りに満ちていた 睨まれていないはずの中村も、青ざめ卒倒してしまいそうだ 「いい加減にしろよ、この豚が 俺が森宮さんを殺したって証拠があるなら、出してみろよ 状況証拠でも物的証拠でも、何でも持ってきてみろよ!!」 「な、中松、行くわよ さっさと捜査に戻りましょう」 そそくさと戻っていく有村 「お前の方が森宮さんを語る資格なんてないんだよ」
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