変化

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リリアについさっきまでの出来事を話す どうやら、他の雄しべに影響されると言う事例は過去に僅かだがあったようだ 怪異が近くにいると特に影響されやすいという 「わかった、ありがとうリリア 広尾に報告してくる」 「悟様」 「なんだ?」 「悟様は、広尾様のことを大層大事に思われているのですね」 「い、いや そういうわけでは……」 「誤魔化さなくてもわかりますよ 先程のやり取りもそうですが 円歌様が亡くなられてから、広尾様が来られる前までのご様子と、 今のご様子を比べると随分、お変わりになられましたから」 「そうか? 自分ではそうは思わないが」 円歌   かつて、花紋病によって恋人を裏切ってしまったことへの、 自責の念で自殺した八ノ瀬の妹 あの時は確かに荒れていた 誰かを心配させることはあっても、誰かを心配する余裕は無かった 「自身の変化は、自身が一番わからないものです 周りから言われて、初めて気づくものです 広尾様もそうですね 随分と雰囲気が穏やかになられた気がします」 「それは…確かにそうだな」 以前は淡々と調査を進め、何に対しても冷めた様子だった 廃小学校で怪異に触れてから、徐々に丸くなっている様に感じる 「おい、八ノ瀬 あの怪異が言っていた事件の記事が見つかったぞ 話が終わったら来い」 「わかった、今行く」 階段から呼びかけてくる広尾の元に向かう その背を見送りながらリリアは、無意識のうちに思いを口にした 「これも花紋病の影響なのでしょうね 花紋病が死を伴わない病であれば、必ずしもとわ言えずとも 幸せになれる方はいらっしゃたでしょうに」 小さなつぶやきも、静かな玄関ホールでは大きく聞こえた
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