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花紋病
「世間一般には、花紋病はただ全身から花が咲いて死ぬ病と噂されております
しかし、正確に言うと少々違います
花紋病によって現れる痣は人それぞれ違います
その人の人生や感情を花言葉で表すように花が変わります
そして、必ず同じ花の痣を持つ男女のペアができます
男性の方を雄しべ、女性の方を雌しべと我々は呼んでいます
あなた様はイヌサフランの痣の雌しべ
まことに、運命とは私程度の霊的存在では読み取りきれぬもの
悟様も、同じイヌサフランの痣を右の手首に持っておられます」
「だから何だと言うんだ?
男女のペアになることに、なんの意味があるんだ?」
「花紋病の別名は、"花番イノ病"
つまり、同じ痣を持つ者同士は擬似的な夫婦となり、様々な制約の元に共に暮らさなければなりません
しかし、ただ暮らすだけなら死には至りません
制約を乗り越えながら、手を取り合い共に暮らしていくうちに、いつしか人は愛情を覚える生き物
花紋病を患った状態で両者が交わった時、二人は全身を痣と同じ花に覆われて死ぬ
これが花紋病の実態です
しかし、なぜ交わった時に死に至るのか、はまだ解明されておりません
それに加え、最近は花紋病の発症者が異常に増えております
広尾様は、その痣がいつ頃できたかわかりますか?」
「覚えていない
気づいたらできていた」
「では、その痣ができる前に何か"この世のものとは思えないもの"を見ませんでしたか?」
「この世のものとは思えないもの……」
言い淀んだ広尾の顔から血の気が引いていく
「何か見たんだな?何を見たんだ?」
問い詰める八ノ瀬
「違う……いやでも、あれは…」
青ざめ、八ノ瀬声が聞こえてないようだ
ブツブツと何かを言っているがうまく聞き取れない
「何か見たんだろ?
答えてくれ、これも謎を解く鍵なんだ!!」
肩を掴み、揺さぶる
「ハッ!!……すまない、疲れが出てきたみたいだ
明日、必ず話す
だから今日はもう休ませてくれ
すまない」
早口でまくし立て、真っ青な顔のまま階段を登っていこうとする
「待ってくれ!!」
咄嗟に広尾の腕を掴む
「離せ!!
明日話すと言っただろう!」
あまりの気迫に怯み、手を離してしまう
振り返った広尾の目は離さなければ、今にも殺されそうな目つきだった
何かに怯えているような、そんな感情も感じさせるような、
鬼気迫る表情で八ノ瀬をしばらく睨んだあと、踵を返して部屋に戻ってしまった
「悟様、広尾様のことはそっとしておいてあげましょう
あの様子ですと、きっと何も聞けないでしょう
焦らずとも、明日話すと広尾様は確約していただけました
明日までには、落ち着いていらっしゃるでしょう
ですが……あのご様子なら、私達の予測はおおよそ当たっていることでしょう」
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