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あれは、オレが私的に捜査をしていた時だった
まぁ、捜査と言ってもその時にはもう警官は辞めていたんだがな
警官をやってた時に、追っていた奴らのアジトに行ったんだ
ちょっとした因縁でな
ただ、そのアジトに着いた瞬間、悪寒が走ったんだ
異常に静かすぎる気がしたんだ
何かが明らかにおかしかった
「これ以上入ったら何かやばい」って直感した
でも、俺はそんなことで調査をやめられなかった
きっと全員で出払ってるだけだと考えたんだ
今考えるとやめておけばよかったと思う
玄関の引き戸には鍵がかかってなかった
音を立てないように中に入ろうと、引き戸を少し開けたときだった
とてつもなく濃い、今まで嗅いだことがないほど濃い、花の匂いがしたんだ
いろんな種類の花の匂いが一気に充満して、思わずむせ返りそうになるのをこらえて、中に入った
すると、奥の部屋から声が聞こえてきたんだ
「やっぱり人がいたのか?!」と
俺は焦ったが、その声は明らかに様子がおかしかった
必死に助けを乞うような、怯えた声だった
もちろん俺はその部屋に向かった
奴らの悪事はどうしても俺が明かしてやりたかったんだ
部屋に近づくにつれ、匂いは濃くなる一方だった
本能はずっと警鐘を鳴らし続けていた
でも、俺は引き返さなかった
一体誰が、何をしているのか
俺は調べなければいけなかったから
嫌に大きい鼓動の音を聞きながら襖をそっと開けた
僅かな隙間から、今までよりもさらに濃い花の匂いがした
ただ、隙間からでは中の様子が全くわからなかった
誰かがいる気配はなかった
だから………襖を勢い良く全開にしてしまった
そこには……そこには、
大勢の男女の死体が………あったんだ
それも……全員花で全身が覆われていた
リリア、お前が前に説明してくれたあれだ
花紋病にかかった奴が死ぬ状況が、宴会場らしき広間で起こっていたんだ
声も出せないほど怖かった
目の前の地獄絵図から目が離せない状況で、部屋の左奥で音がしたんだ
肉が裂けるような…嫌な音が
目を向けると……………
言葉が詰まる
思い返すだけで吐き気がした
「広尾、大丈夫か?」
八ノ瀬が心配そうにこちらの顔を覗き込む
「問題ない……少し、待ってくれ」
一つ深呼吸をする
目を向けると、そこには人が立ってたんだ
いや、正確にはとても人とは呼べない
そいつも、全身が植物で覆われてたんだ
だが、そこらに転がっている奴らとはワケが違う
そいつは、その植物を操っていたんだ
自分の手足のように
そいつの足元には、今まさに花が皮膚の下から芽を出して開花している最中の、人間が見えたんだ
気づいたら…俺は家のベットで寝ていた
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