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「とまぁ、俺が見たのはここまでだ
で、これがどう鍵になるんだ?」
「その前に、それはいつ頃見たんだ?」
「半年、くらい前だったな
痣がついたのは、多分もうちょっと後だ」
「やはり…か
実はな、花紋病はかなり大昔からあったんだ
一体の怪異が悪戯程度に年に数人、発症させていたのが起源なんだ
ただ、今回は年に数人どころの話ではない
ここ半年で花紋病で死んだと思われるやつは急増している
おそらく、別の怪異、または複数の怪異のしわざによるものと考えていたんだが、確証がなかった
ここ最近、怪異が増えているという情報はよく入る
しかし、それらが本当に花紋病の原因であるのかはわからなかった
広尾の話のおかげで、俺の推測は正しかったんだと今わかった
おそらく、広尾の見た怪異が元凶であり、それの恨みに影響されて別の怪異も現れだしている可能性が高い
半年以上前に花紋病が出たという情報も、怪異の表立った情報もないからな」
「怪異とは、悲惨な死を遂げた者が、その恨みの力により変質して実体を持った存在
その思いが強ければ強いほど、生きている人間に多くの影響を及ぼします
今急増する花紋病患者の方々の数を考えますと、
相当強い恨みを持つ怪異がおそらく複数体、いると考えたほうがよろしいかと
そして、広尾様のお話を聞いていてもう一つ、気づいた点があります
本来、花紋病は長く時間をかけなければ死に至る病ではありません
しかし、今のお話ですと、おそらく痣がついてすぐに死に至っているように感じられました」
「つまり、どういうことだ?」
「今、世に蔓延りつつある怪異は、意図的に花紋病で、人を死に至らしめることができる
ということだな?リリア」
「そのとおりでございます、悟様」
「じゃぁ、その怪異について調べていけば、花紋病を治せるのかもしれないのか?」
「その可能性はある
これからはその怪異達を追うことになりそうだ」
「そうか…そうなのか」
広尾の声はどこかあまり気が進まないような声色だった
「ところで、怪異はどうやって見つけるつもりだ?
まさか、聞き込みからとか古典的なことでもするのか?」
「いや、そのあたりの噂に詳しい情報屋がいる
昨日のうちに一応調べておいてくれと頼んでおいたから、今日中には情報を持ってきてくれるだろう」
「そうか」
「浮かない表情だな
何か心配事があるのか?」
「前に見た光景にもう一度、遭遇する可能性はゼロではありません
もし、それがどうしても辛いと仰られるのであれば、広尾様はこの屋敷でお待ちいただいても構いません
怪異については悟様はプロでございますので、おまかせくださってもよろしいですよ」
「違う、そうじゃないんだ
そうじゃない……が………
いや、俺はこの目で確かめる
こいつ一人に任せてられない」
「そうでございますか
あまりご無理はされぬよう」
==========
(森宮さん……花紋病のことはだいぶわかってきた
けど……花紋病のことがわかると、あんたのことがわからなくなっていくんだ)
ー なぜ……綾、お前がここにー
ーこれ以上、怪異に、花紋病に関わるな
死にたくなければ……なー
あの襖を開けた後に聞こえた声がよぎる
八ノ瀬やリリアには話していなかった
あの場所に怪異として、花紋病で多くの人を殺していた人物のこと
『森宮』について
(怪異を調べたら……また、会えるんだろうか
花紋病にかかった俺を見て、どう思うんだろうか)
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