第三のゲーム:ペイントゲーム

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「赤条、手伝って欲しいことがあるから着いてきてくれる?」 食堂で黄久瀬さんがそう言うと俺怪我してんだけど…、と不貞腐れたリョウスケさんの声が聞こえた。 ガタンと何かが動く音がすると足音が近付いてきて私は口元を手で覆った。 「何手伝えばいいんだ?」 「灰永の部屋、貴方が倒れた時に少し汚れちゃったから掃除するのよ。あのままじゃ色々と落ち着かないでしょ」 「…そうだな」 二人が遠ざかったのを確認すると扉の後ろから出て食堂に入る。足早に向かい側にある扉へ行こうとしたがまだ部屋に残っていた二人の視線が刺さった。 「ケイトちゃん、そんなに急いでどうしたの?」 にこっと微笑みながら話しかけられて、咄嗟に立ち止まる。 紫滝さんに話してもきっと止められることはないだろう。だけど…。 「倉庫に、探し物を」 「そっか。一人じゃ大変でしょ?僕も手伝うよ」 人当たり良さそうに名乗り出てくれたが、どこか信用しきれない私は素直に手を借りることが出来なかった。やんわりと、波風立てないように断ろう。 「ありがとうございます。でも大丈夫です」 「マサチカ君は早く目元を冷やしてきなよ。泣き腫らしちゃってるからさ」 私の言葉に被せるようにマサチカに声を掛けるとまた私に微笑んだ。早く一緒に行こう、そう言わんばかりに手を差し出してきて話が飲み込めなくなる。ちゃんと断ったはずなのに、強引にも着いてこようとしている異様な行動がこれまでと打って変わった様で更に信用が無くなっていく。 私の中の何かが二人っきりになっちゃだめだと警告し、マサチカへ必死に目で訴えかける。 「マサチカ君、タオルなら脱衣場にあるからね」 「僕…」 小さな声は紫滝さんに届かず、私の手を掴んで歩き出した。温かい手に掴まれているのに私は一気に身体を冷やした。 去り際、マサチカに託した言葉が伝わっているだろうか。音が出せなかった状況で理解してくれたか微妙だけど、今は願うしかなかった。
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