第三のゲーム:ペイントゲーム

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優しく振舞っていた姿は仮初、奥に隠された黒いものが躊躇いもなく垣間見えた。 それに紫滝さんは…何かを知っている。 「えぇ、図鑑って思いの外面白くて、栞を探し終わったら部屋でじっくり読むことにします」 「実は僕も青門さんの料理を食べてから野菜とかに興味が出たんだ。良かったら一緒してもいいかな?」 何が何でも私にべったり着いてこようとして対応に困る。他の人に比べてよく話し掛けてくれるとは思っていたけど、私の事を監視でもしたいのだろうか。返答を考える時間を稼ぐ為に落とした本を丁寧に拾い上げる。しかしそんな短い間でさえ許さなかった紫滝さんが続けて話し出した。 「それとも赤条さんと二人で読む約束でもしてたりして」 微笑みなんて影も残さず消えた表情にひゅっと呼吸が止まりまた落としそうになった本を慌てて力強く握った。 紫滝さんはおかしい。食堂でもマサチカを無理やりに帰し私と二人っきりと言う状況をつくった。何か聞いてくるわけでもなく黙々とページを捲っていたから特別な事情でもなさそうなのに。それにリョウスケさんとの関係をやけに気にしている。 ここまで思案していると途端に酷い頭痛が襲い頭を抑える。ずきずきと痛みながら頭をちらつく黒い影、そしてノイズのかかった音が鳴り止まなかった。耐えきれず背を本棚に預け辛うじて立つが痛みが引く気配が一向になかった。 「辛いの?僕が支えてあげるからこっちに倒れておいで」 一見、私を慮る姿勢に思えたその言葉は黒く塗り潰された黒さが、私には見え隠れしていた。 「大丈夫です」 ずるずるとしゃがみ込み、痛みが治まるのを待った。その間も私に落ちる陰は動くことが無かった。
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