第4話 瞳の理由

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 ようやく本堂に話せると聖は上機嫌だった。    そんな聖を見て本堂も察しがついたのだろう。自分からその話題を振ってきた。 「よかったな、オメデトウ」 「え? 知っていたの?」 「お前のそのご機嫌な顔見りゃ誰だってわかる」 「バレちゃった。そうなの、約束通り一番とったのよ。さぁ、教えてちょうだい」 「そんなに聞きたいのか?」 「だって、不思議だから。疑問があるととことん調べるタイプなの」  聖がずい、と詰め寄る。 「さあ、教えてよ。どうして家庭教師になったの?」  本堂はしばらく表情を変えなかったが、たっぷりと間を開けて答えた。 「お前に近づきたかったからだ」  本堂の一言を聞いて、聖はしばらくその目を見つめた。嘘を言っているようには見えなかった。  その言葉にどんな意味があるかは知らないが、あるとしたら三通りだ。  よくいるのは藤宮というブランドが欲しい人間。藤宮に恨みを持つ人間。三つ目は、まだ出会ったことがない。  この男がどれに分類されるか、今判断することはできない。それよりも、一つ目と二つ目で自分ががっかりすることの方が怖かった。ようやく面白い人物と出会えたのに、解雇にはしたくない────。  聖はしばらく考え、結論を出した。 「あなたはいつも面白い答えを出してくれるのね」 「聞かねえのか?」 「たとえそれを聞いたとしても私は何もしないわ。自分の立場は自覚してるから」 「案外賢いんだな」  苦笑して、聖は机の上の成績表を屑篭にシュートした。  聞くことができなかった。本堂の答えは聞かなくても分かっていた。  自分を見つめるその目が、何を言っているのかその時に理解した。  それでも彼をそばに置きたいのは────自分を崩さないために必要だと判断したからだ。
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