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本堂は一見変人のようだが、他人よりに遥かに抜きん出た知性を持っていた。
家庭教師としての実力、会社の成績云々もそうだが、なにより聖を退屈させなかった。話すことがいちいち面白くて、優等生かと思えば人をくったようなしたたかな面もある。それを隠さず見せるところも気に入っていた。
「聖、なんか楽しそうだな」
退屈だと言っていた家庭教師との時間は楽しいものになっていた。
聖がご機嫌だから、俊介もすぐに分かったのだろう。
今まで、ロクでもない家庭教師の愚痴を聞くのは俊介の役目だったが、本堂に変わってからはそれはピタリと止んだ。
「久しぶりに面白い人に出会えたから嬉しくって」
「この間の家庭教師か? ちょっと見かけたが……なんか今までのと違うタイプだな。藤宮グループにはいないタイプというか……」
「そこが面白いの」
「あんまり油断するなよ。家庭教師だからって……どっかのスパイかもしれないし、お前に取り入って会社を──」
「もう、本当に大真面目ね。大丈夫、いざとなったら俊介が守ってくれるでしょ?」
「……危機感がない奴だな」
聖が感じていることは、面と向かって話したことのない俊介にも分かったのだろう。
今までの家庭教師はいかにも真面目を絵に描いたようなタイプだった。それは恐らく、過去の家庭教師達が藤宮に取り入るためにあれこれ模索した結果になのだろう。
だが、少しでも評価を得ようとした彼らの努力は、聖のお気に召さなくてあっけなく散ってしまった。
ところが今度の家庭教師、本堂一は決して真面目とは言えない。むしろ不真面目なタイプに分類される。
正確に言えば、やる時はしっかりやるしやらなくてもいい時は手を抜くタイプ。オンオフを使い分ける男だ。
藤宮コーポレーションに入社できたのは、その非凡な才能と頭脳のおかげなのだろう。
俊介は警戒しているようだが、家庭教師の選考は非常に厳しい。何か事件があった時のために、身元確認までされる徹底ぶりだ。だから聖は本堂のことを微塵も警戒していなかった。
誰とも違う本堂に思うところはあったが────。
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