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触れたら切れそうな鋭い岩壁と、古く頼りないガードレールの向こうに抜け落ちる絶壁の間を、時速300キロで走り抜ける。
今日、俺が操るのは、ヤマハのVーMAXだ。
エンジンは水冷V型4気筒、馬力は151。311㎏の巨体だが、圧倒的なパワーで、信じられない加速をする。
左右交互に現れるタイトなカーブを抜けると、約2キロメートルに渡る直線コースに入る。
一気に加速したことで、フロントがわずかに浮き上がる。
全体重を前方にかけ、なんとか路面に着地するが、その隙に追尾していたバイクが、すぐ後ろまで迫ってきてしまった。
「させるかよ!」
グリップを握り直し、迫り来るヘアピンカーブに備える。
スピードは100キロを保ったまま、車体を横に倒しバンクさせ、一気に曲線に入る。
肘が路面に触れるすれすれの角度で、自分の体重をタイヤと路面の僅かな設置面に乗せる。
慎重にバランスを取りながらカーブを曲がる。
と、てっきり突き放したと思っていたバイクが、自分を透き通って前に出た。
「あ、くそ!」
しまったと思ったときには遅かった。一瞬バランスがくずれ、思わずアクセルを開いてしまった。たちまち後輪のグリップが戻り、車体を内側に吹っ飛ばしながら、転倒した。
岩壁に身体を強く打ち付けられ、路上に転がる。
目の前には真っ赤な文字で“再起不能”と表示される。
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