靄を払う

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さて、『出世コース間違いなし』ともなれば、次は人生の伴侶を得るため、綿密な計画を練られなければならないだろう。 ――ここでも僕は、例の不安に苛まれた。 積み重ねた幸せのお裾分けで、もう充分不幸から回避できているはずだ。 不思議と他人にお裾分けをすればするほど、僕に幸運が利息をつけて戻ってきた。 何も心配はいらない。全てが予定通り、順調だ。 今まで、女性と何度か交際はしてみたものの、長続きはしなかった。 どうにも1人の女性に興味を持ち続けることができなかったのだ。 どの女性もグルメや洋服、旅行など、他人に自慢できるような事ばかりに関心を持ち、聞きたくもない話を延々続ける。 こちらがあからさまに話を逸らそうとしていても、その事にさえ気づかない。 本当に心を通わせる事ができる女性は1人もいなかった。 同僚達は、社内にいる派手で傲慢そうな容姿だけ整った女性達を褒め、時には男同士で卑猥な冗談を言う対象として彼女達を蔑んでいた。 僕は、そんな風に男達に想像で弄ばれている女性などには、まるで興味がない。寧ろ御免被る。 今後の昇進や将来の安泰を考えれば、僕に黙って付いて来てくれるような女性、決して自己を主張することのない女性が一番妻に相応しい。
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