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そんな女性を探し始めた時、僕の前に現れたのが靖子だった。
会社役員の縁故で入社した彼女は、条件の良い結婚相手探し等という野心がなかった。
これだけ聞くと、昇進したい男性の目に留まりそうなものだが、靖子は決して男好きするようなタイプの女性ではなかった。
容姿もぱっとせず、誰とも打ち解けず、存在感がない為、男性はおろか女性社員達からも関心を持たれることがなかった。
ライバルもろくにいないとなれば、あとは話が早かった。
周囲に愛されてきた僕が彼女に気に入られないはずがない。
仕事中はそっと要領の悪い彼女をバックアップしたり、1人ポツンと昼休みを過ごしている彼女をランチに誘ったりして、徐々に距離を縮めていった。
――孤独な人間は御しやすい。
僕は靖子と簡単に付き合い始めることができた。
昇進を狙っての結婚と思われないよう、プロポーズの時期も入念に計画しなければ……
同僚達は、このアンバランスな組み合わせに口々に噂話を始めたが、愚者の戯言など気に留めることもなかった。
完璧とは言えない靖子と結婚すれば、また幸せのお裾分け貯金ができる。
失敗のない未来にまた一歩近づいたんだ。
それなのに……
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