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3-5.新里麗奈
あたしがバンケットホールに戻ろうとすると、北川ADが近づいてきて「お疲れ様です」と小さく言った。
「皆様にお伝えしていますが、この後部屋の様子を撮影させていただきます。
カメラが仕掛けてあるところは、前にお伝えした通りです」
「了解しました。
ありがとうございます」
あたしも小さな声で答える。
北川ADは少し笑って頷くと、離れて撮影クルーの固まっているほうへ歩いて行った。
バンケットホールに戻ると、先ほどまでの緊張感はなく何となく弛緩した空気が流れていた。
まあ、無理もない。
プリンスとの個人面談は、皆それなりに緊張するよね。
TVカメラもあるし。
「みーちゃ、どうだった?」
彩香ちゃんがすぐにあたしの隣に来て、彼女にしては大きな声で訊いてきた。
あたしは彼女の表情を見て、ちょっとビックリする。
透き通るように青白かった頬は、ぽっと赤く上気し、コンタクトレンズを入れた瞳は明るく輝いている。
「どう…って?」
彩香ちゃんの変貌に、戸惑いながら質問で返すと、彩香ちゃんはくすっと笑って「来海さんとお話したでしょう?」と言ってあたしの顔を覗き込んでくる。
あたしは咄嗟に周りのTVカメラのことを思い出し、きゃははと笑った。
「がちさいこー!
めためた好きぴ♡」
ほとんど話なんかしてないし、なんだか全然わけわかんなかったけどねえ。
内心のため息を押し殺して笑って見せる。
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