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「私ね? 今はお母さんとおばあちゃんの三人暮らしなんだけど、ずっと両親は私が三歳の頃に離婚したって聞かされてた。でもお父さんは毎年手紙をくれて、昨年ついに家のポストに手紙をいれている姿を見たの。二階から見たから、もしかしたら良く見えてなかったのかもしれかいんだけど、あなたきそっくりだった」
顔を上げると、彼女は懐かしそうに目を細めながら俺の顔を見つめる。
「その手紙には来年は会えるって書いてあったから、楽しみにしてたんだけど……。さっき家に帰ったら、お母さんとおばあちゃんが話してるのを聞いちゃったんだ」
「話って?」
「お父さん、本当は私のせいで三歳の時に死んじゃったんだって」
__死。
その言葉に、ドクドクと脈が速くなる。
「ドラマなんかで、よくある話しだよ。公園で遊んでいたら、外にボールが転がって追いかけた私を庇って死んだ。だから結局、手紙はお父さんが書いたものじゃなかった。だって、この世にいないんだもの。当然、あなたもお父さんじゃない」
そう言うと、またミルクティーを一口飲み込む。
「私にとってお父さんからの手紙は心の支えだったの。なのに、手紙はお父さんからのものじゃなかった。ましてや、私のせいで死んでいたなんて……」
俯いた彼女が、今どんな顔をしているのかはわからかい。
だけど、コップを握りしめた両手が微かに震えている。
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