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新たな仲間の巻
ヨネゾウの朝は早い。
夜明けと共に目を覚ますと、外の空気を吸いに城の外へでる。
そこで、無手勝流に剣を振り回す。汗をかくと、井戸から水をくみ頭から浴びる。
セシルの朝も早い。
鶏が鳴き出す頃には、服を着替え、旅支度をする。
王様にもらった大量の金貨を、鍵つきの箱にしまうと、魔法で宙に浮かせた。魔法の証しに、杖と箱を一本の光る線が繋がっている。
ヨネゾウが戻ってくる。半裸で。
どこにあの強靭な剣劇を放つ力があるのだろうかと不思議に思うほど、よぼよぼだ。
そのまま、ヨネゾウは腹が減ったと、城のものに伝え、堂々と城を闊歩する。
私には到底理解できない行動だが、仕方なく後ろをついていく。
ヨネゾウの食事は遅い。
ゆっくり味わい、一口一口食物にたいして感謝をのべるように食べる。
今日は、街に出て仲間を探すことになる。
長い時間をかけた食事を終えると、日はすでに登りきっていた。
続けて、昼食を食べ始めるヨネゾウを止めようとするが、無理だった。
昼食を食べ終わる頃には、日が暮れ始めていた。
私は、その間ヨネゾウの横で、黙々と神に祈りを捧げ、聖魔法力の底上げに勤しむ。
食事中、ヨネゾウは一切喋らない。こちらが話題をふると、喋るなと叱られたことがある。
どうやら気がすんだらしいヨネゾウは、そろそろ時間じゃなと、身支度をする。
よっこいせと、謎の掛け声をし、荷物を背負う。
今、この双肩に、この国の命運がかけられていると思うと、なんだかやるせなくなった。
とはいえ、このお方の力は本物。まさに我らが神に祝福されしお力。
先のドラキュラ討伐では、まざまざとその力を見ることができたのだ。疑う余地もない。
それでももう少し落ち着いて動いてほしいものだが。
街はすっかり夜になり、酒場などが賑わい出す。
ヨネゾウは、とある居酒屋を開いた。
数ある居酒屋でも、かなり柄の悪いタイプがそろう店だった。
私は、少し怯えながら、ヨネゾウの後ろをついていく。
店員に、なにを食べるかと聞かれるとヨネゾウは、たらふく食べたばかりじゃ、今はいらんと返す。
それじゃあ何か飲むかと聞かれても、ワシは酒は飲めんと返す。
頭に来たような店員は、じゃあなにようだと返すと、ここを潰しに来たと返答する。
私は、その予期せぬ答えに悲鳴をあげる。
そうだったのね!そうだったのね!とアワアワしてしまう。
周りが一気に殺気だつ。
各々が自前の武器を手に取り、なんだこのジジイは、と口々に言う。
ヨネゾウは、テーブルの上にたち、こう宣言する。
「聞けばここ。人様を不幸にする悪逆無道が集まるらしいのう。お天道様が許しても、ワシは許さん」
そういえば、今日城で泣いていた騎士が、話していたことを思い出す。
この店に出入りした娘が殺されたとかなんとか。
私は、悲痛そうな顔をしただけで、今の今まで全く覚えていなかったのだ。
ヨネゾウは、テーブルからテーブルへと飛び回り、大立回り。
悪党どもをバッタバッタと斬り倒し、店員に刃を向ける。もちろん誰も死んでおらず、うめき声がただあがるのみである。
「これで注文は以上じゃが、お代は必要かの」
店員が、泣いて己の罪を自白し始めた。
「詳しい話なんぞ聞きとうないわい」
ヨネゾウは、笑う。
こっちを見て、セシルちゃん無事かのうと聞く。
私は何一つダメージもなく、ヨネゾウに守られていたことに気づく。
パチパチパチパチと店の奥から、拍手が聞こえる。
そこには、女がいた。
かなりの軽装で、それでいて身のこなしは熟練の冒険者のように見えた。
「すごいじゃない!おじいさん」
そういってヨネゾウに近寄る。
ヨネゾウは照れる。すごい照れる。その女はかなりの美人で、胸も私よりあるようだった。
油断しきったヨネゾウを横目に、女はナイフを取り出し、私に向けて突き出してくる。
私は、悲鳴もあげれず、ただその景色を見ることしかできなかった。
ヨネゾウは、ナイフを軽々つかみとると、指でへし折った。
「あまいのう。セシルちゃんを刺したければ、先にワシを殺すべきじゃのう」
女はへたりこむ。相当高価なナイフだったようで、へし折れたナイフを大事そうに抱えてた。
ヨネゾウは、少しの罪悪感を感じたようで、
いくらじゃ、そのナイフは、と尋ねる。
女は、ヨネゾウを見上げると、なかなかの金額を言い出した。
ヨネゾウは、微笑み、こういう。
「ワシの仲間になったら、その倍の金額をだすぞい。名前はなんじゃ?」
と。
「ユミルよ。他に名乗る名はないわ」
「ワシは、勇者ヨネゾウじゃ、共に国を救うぞい」
ユミルは、どこか救われた顔をしたのち、号泣した。
どうやら国を襲った魔物に、親兄弟を奪われた、など身の上話をしだす。
私を殺せば、報酬が出ると聞いたらしい。恐らくは、ゼルゴーニュ家によるものだろう。
そうこうあって、仲間が一人増えたのだった。
「これにて一件落着じゃな!」
店を出るや否や、ヨネゾウは、満足そうにこう一言を告げると、店は大きな音を立てて崩壊した。
もちろん中に人はおらず、犯罪に手を染めていた人たちは、残らず騎士たちにしょっぴかれていた。
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