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「結婚なんてしない。そもそも、デキ婚と言っても相手の子どもの父親は俺じゃない」 まさかの激白に、俺は酷く困惑する。 ――どういうことだ? 眼を大きく見開き、俺はその続きを待った。 「アラサーということもあってか、この頃周囲から“結婚しろ”としつこく言われるようになってだなぁ。外堀りから埋められていったんだ」 確かに風雅程、将来有望なエリートだと何処へ行っても縁談の心配をされるだろう。そんなことくらい俺だって理解している。 だからこそ、俺だって大晦日の晩“あの夜”だけだ。そう頭では言い聞かせていたのだから。 結果、想いが溢れ出して今日の今日まで風雅を引きずってしまい無理だったが。 「……妊娠していた相手の女性は、俺の取り引き先の娘でお腹の中にいた子どもの父親との結婚を反対されていた。そもそも、出逢った頃から椿冴のことが好きだった俺に、他の女と結婚する選択肢なんて一ミリも存在しなかったんだ」 さらりと告白した風雅に、やはり俺は遥か昔から愛されていたことを知り酷く赤面する。 「だが現実はそうもいかず、お見合いだけでも、って言うから仕方なしに会ったんだ。そこで、相手の女性から事情を聞いた俺は、お互いの利害関係が一致するってことで偽装の婚姻関係を結ぶことにしたんだ。だって、これからも可愛い可愛い椿冴の顔をせめて大晦日くらい独占したいだろ?」 全くエリートの思考はよく分からない。 だがその言葉は、俺を浮上させる為には抜群の効果を発揮していた。 「あー。ずっと言えなかったこと、全部吐き出せてすっきりした。同じところに就職しようとして椿冴に拒否されたあの時の俺、実はかなりへこんだんだからな」 すっきりした表情の中に少しの恨めしさを浮かべる風雅。 「だ、だってまさか有名企業の内定貰ってる風雅が、わざわざ俺と同じブラック会社に勤めることなんてないと思ったから……反対くらい、するだろ? だいたい俺たち家が隣同士だし、幼馴染みだし……会おうと思えばいつだって会えるじゃないか」 溢れんばかりの嬉しい感情で充たされていた俺は、照れ隠しする為にわざと口を尖らせ顔を背ける。 その様子に、クスクスと声を上げ笑う風雅。 「それじゃ、ダメなんだ。ただの幼馴染みじゃ――。現に椿冴こそ、鈍いから外堀りから埋めていかなきゃいつまで経ったって俺への気持ち……自覚しなかっただろ?」 反論できないその言葉に、俺はグウの音も出ない。 「誰よりも何よりも、俺が椿冴の一番になりたいんだ。これからも一生、俺の傍にいて下さい」 俺の両手を掴み、真剣な表情で風雅は告げた。 甘いマスクが見せる、何時になく真剣な表情に、俺の鼓動は今直ぐ爆発しそうな程激しく脈打つ。 「――えっと、マジ……かよ?」 夢みたいな“キセキ”の展開に、俺は思わず聞き返せざるを得なかった。 「マジ」 目の前でにっこりと微笑むその大切な存在に、どうやら願っていた“キセキ”が今ここに起きたことを知る。 次の瞬間、“好き”の感情全てを爆発させた俺は、全身で精一杯の愛を伝えるべく飛び付くようにして風雅へ抱きつき、今度は俺から噛み付く様な幸せのキスを仕掛けたのであった――。 HAPPY EVER AFTER(めでたし、めでたし)
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