恋々と花綻ぶ

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 一度触れて仕舞えば最後、僕は歯止めが効かなくなった。 僕は娘の手を引き、自室へと歩みを進めた。ねぇ、どこに行くの? 何をするの? 娘の問いかけには答えなかった。自分でも、何をしようとしているのか分からなかった。いや、本当は分かっていた。分かっていて、気がつかないフリをしていた。だって、そうするしかないじゃないか。頭の中に浮かんだ酷く馬鹿馬鹿しくて、酷く滑稽なことを、僕は行動に移そうとしていたのだから。 自室のドアを閉め鍵をかけた時、そこには、僕と娘しかいなかった。先生に愛されている君と、先生に愛されることのない僕。君は僕にはなれないし、僕も君にはなれない。だから、こうするしかないんだよ。そう言い聞かせた。 僕は畳の上に娘を寝かせ、その細くしなやかな身体に手を滑らせる。彼方此方に触れながら、僕は酷く幸福だった。先生が愛した娘を、僕も同じように愛す。僕は先生に愛されることはないけれど、こうして娘を愛すことができる。 僕と先生は同じ——そう、同じなのだ。抗うことなどできやしないのだ。 愛らしい声で煽る娘に、僕は何度も何度も口付けた。身体中に散りばめられた赤い印にも、薄桃色の唇にも……。先生が触れた全ての場所に触れてみたかった。 君は先生に愛されて幸せだね。僕の言葉に、娘は少しだけ哀しげに微笑んだ。私はいつか、先生に手折られてしまうでしょう。枯れてしまえば、花の命はそこで終わり。もう咲くことなどできはしないのです。ねぇ、あなたは知っている? 美しい花は次から次へと咲き誇り、甘美な香りで誘惑するの。抗うことなど不可能なのよ。 私はあなたになりたかった。娘はそう言うと、僕の頬をするりと撫でた。その指先が酷く冷たくて、僕は思わず娘を強く抱きしめた。
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