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「あれからもう六年か。お互い老けたな……と言いたいところだが、千歳はあの頃とあまり変わらないな」
缶コーヒーを一口含み、過去に想いを馳せるようにそう言って風間は目を細めて笑った。
第一印象は近寄り難い上司だったが、こうして部下を気遣ってコーヒーを奢ってくれたり、笑顔はなんだか可愛らしいところを見ると、風間は温かい人なのだろうと琥珀は思った。
「東雲は刑事課配属されてまだ一年くらいだろう?」
「はい」
「少しは慣れたか?」
「千歳先輩のご指導もあり、少しずつ経験を積ませて頂いてます!」
「あはは。模範的な回答だな」
「いえ、本当のことですから」
「そうか。ああ、そういやお前ら……大塚では“閻魔と菩薩”って呼ばれてるんだって?」
「……閻魔と菩薩?」
琥珀も緑もお互いに顔を見合わせて小首を傾げる。
どう考えても日頃から怒ることが多い緑が閻魔で、慈愛に満ちた琥珀が菩薩だ。一体誰がそんなことを。
「もしかして……二人共知らなかったのか?」
「初耳です。琥珀、知ってた?」
「いいえ……」
二人の返答を聞いた風間は気不味い様子で頬を掻きながら「今のは聞かなかったことにしてくれ」と苦笑して、逃げるように姿を消した。
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