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緑より二十分程前に現場へ到着し地取り(聴き込み捜査)をしていた琥珀は、手帳を開きながら報告を始めた。
「マル害(被害者)は近所に住む、中村隆三十六歳。死亡推定時刻は今から二時間ほど前の、午後三時頃。死因は、腹部と胸部を包丁で刺されたことによる出血性ショック死。彼を殺害したと供述しているマル被(被疑者)本人が一一〇番通報しています」
「マル被本人が……?」
苦悶に満ちた表情で仰向けに横たわる遺体の確認をしながら、怪訝そうな声を上げた緑に、琥珀は報告を続ける。
「はい。マル被はこの家に住んでおり、マル害の姉である、中村早苗四十歳。職業は女優です」
「ん……? 中村早苗って、化粧品のCMとかドラマにも頻繁に出ている、あの人気女優?」
「はい。まだ聞き込みの途中ですが、どうやら弟の隆との間に金銭トラブルがあったようです」
「金銭トラブルね……」
緑はふに落ちない様子で、遺体から殺害現場全体へ視線を移した。
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