第1話 人気女優は殺人犯

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「女性の刑事さんって本当にいるんですね」 「ええ。数は少ないですけど」 「あの……刑事さん、ご結婚は?」 「していません」  テレビのスピーカーから度々流れていた透明感のある声。できることなら、こんな場所で聞きたくはなかった。 「恋人は居ますか?」 「まあ……はい。そうですね」  本来なら、被疑者の質問に対して答える必要はない。まして、自分のプライベートに関わる内容なら尚更だ。  しかし、黙秘を続けていた彼女が緑の前では口を開いた。それにはきっと“何か理由”がある。この機を逃す程、緑は甘い刑事ではない。 「刑事さんは殺したいと思うほど、人を憎んだことってありますか?」 「……刑事にそれは、愚問では?」 「ああ。そっか、そうですよね。すみません……」 「まあ、人間ですからね、私も。殺してやりたいと思った経験(こと)はありますよ。ですが、たとえ殺したいほど憎い相手がいたとしても、その間違った衝動を理性で抑える。それが本来人間のあるべき姿だと、私は考えます」  まるで死んだ魚のように濁った目をした早苗の問いかけに、緑は閻魔のように目を吊り上げ、威圧的に答えた。
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