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その夜、緑は一度自宅へ戻り熱めのシャワーを浴びた。頭をクリアにしてから状況を整理するためには、この方法が一番いい。
細身ではあるものの柔道で培った鍛え抜かれた身体にバスタオルを巻き、肩まで伸ばした黒髪をドライヤーで乾かした後、ミネラルウォーターを飲みながらリビングのソファーに腰掛ける。
―――― 一体、中村早苗は誰のために殺人事件を起こしたのか。あの様子だと本人は絶対に口を割らない。何か彼女の交友関係に繋がる情報は……。
そう頭の中で自問自答していると、仕事用のスマホが着信を知らせた。画面には、琥珀の番号が表示されている。
「もしもし」
通話ボタンをタップすると、受話器の向こうでは男たちの騒々しい声が飛び交っていた。その音声を耳にしただけで何かが起きたことは明白だった。
「千歳先輩、緊急連絡です! 中村早苗が留置場で突然死しました!」
「えっ!?」
さすがに今まで経験したことのない最悪なクリスマス。けれど思考よりも先に緑の口と体は動いていた。
「すぐ行く!」
幸い、ここから大塚警察署までは目と鼻の先だ。走れば十分とかからずに、駆けつけることができる。
彼女は下着を身に付けるとハンガーに掛けておいたスーツをひったくり、急いで身支度を整え、コートを羽織って部屋を飛び出した。
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