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「同性愛なんて、神の意志に反している」
この国に来る前、コーヤと一緒に僕の故郷を訪ねたとき、頭を抱えた母が僕らに言ったことだ。コーヤがイタリア語を理解できると知った上での発言で、僕は自分の母親がそんな失礼な人間だったということにショックを受けて、何も言い返せなかった。
「俺は別に気にしてないよ。もともと神の意志に従いたいと考えたこともないし」
家を出てからコーヤが呟いた不敬なその言葉が、とても心強かったのを覚えている。僕は神の愛を信じているし、コーヤと生きることでそれを失うとは思わないけれど、信仰を持たない人の自由としなやかな強さを、彼に教えてもらった。
貧困や紛争、環境破壊に自然災害。問題が山積みだった地球に降り注いだ未曾有の世界的大流行。これを神罰や試練に関連づけて語ろうとする人たちの良識を、僕は疑わずにいられない。
母とはその後も平行線で、電話で話すたびに僕を「神の望む道に」戻そうとするからいつもケンカになる。
「神の意志なんて、もう誰にも分からないじゃないか!」
しつこい母に僕がぶつけたその台詞を、コーヤはなぜか気に入ったらしい。クリスチャンらしからぬ発言だと彼は僕を揶揄うけど、別に口が滑ったわけじゃない。
考えてみれば、神の意志なんて元から誰にも分かるはずがない。それを分かるなんて言うのは、不遜で傲慢だ。
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