僕らのいま 地球の裏側で虹をかける

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「ハチドリは毎日昏睡するって、知ってた?」  僕が調べたばかりの知識を披露すると、コーヤは首を傾げた。 「昏睡? 睡眠じゃなく?」 「普通に寝るより深く眠るってこと。起きてる間のエネルギー消費が激しいから、毎日冬眠するみたいに深く眠るんだって」 「ああ、なるほど。あれだけ激しく羽ばたいてれば、ちゃんと休まないと保たないよな」 「今の僕たちも、そうかもしれないね」  言葉の意味を図るように、コーヤは黒い瞳で僕をじっと見た。 「人間はさ、今まで忙しなく働きすぎた。昼も夜もなく動き回って、世界中の空を休みなく飛び回って、羽を休める暇もなかった。だから今は、神さまが人間を強制的に昏睡させている。ちゃんと休んで、その時が来たらまた動き出せるように」  クリスチャンの僕が神の話をすると、日本では大抵イヤな顔をされた。生活に宗教が溶け込んでいる感覚を、日本人には理解してもらいにくい。勧誘や布教をする意思などないのに、露骨に警戒する人もいた。  コーヤも以前は物憂げな顔をしたけれど、 「神の意志は、もう誰にも分からないんじゃなかったのかよ」  そう僕を揶揄(からか)って、いたずらっぽく笑った。
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