9話

1/1
2993人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

9話

あの言葉の意味が気になって仕方なくて、今日1日自分が何をしてたのか、よく思い出せない。 私は定時で帰れたけど、課長はまだ無理そうだったな… 落ち着かないし、晩ご飯でも作ってようかな。 …あれ?今玄関の音がしたような… 「…ただいま。」 「あ…おかえりなさい…」 予想外に早い課長の帰宅。 課長が帰ってきたら、朝の言葉の意味をすぐに聞こうと思ってたのに、いざとなるとどう切り出したらいいか迷ってしまう。 「あの、課長。その…」 「…朝の事なら、忘れてくれて構わない。」 「…どうしてですか?」 「俺にあんなこと言われても、お前は迷惑だろう?」 「迷惑?…だったら何で、皆の前であんなこと言ったんですか?」 「それは…」 こっちは1日中落ち着かない気持ちでいたのに、忘れていいなんて。 ちゃんと、課長の気持ちが知りたい。 「…社内の男にも、他の誰にも渡したくないと思うぐらいに、お前が好きだから。どうしても、言いたくなったんだ。」 「課長…」 はっきりと好きだと伝えられて、嬉しくて目の前が霞んでくる。 「でも別に、断ってくれて構わない。年も離れているし、上司だからと気を使う必要は…」 「嫌です。絶対断りません。」 私の言葉に、驚いた様に目を見張っている。 「だって、私も課長の事が好きだから。」 「…本当に、気を使う必要は無いんだぞ。」 「私は、課長の事が本当に好きなんです。」 そうはっきりと伝えると、凄いスピードで課長が近づいて来た。 「え?あ、あの、どうし…」 「じゃあ、もう我慢しなくていいんだな?」 「我慢…?」 「…一昨日、酔ったお前の無防備な姿を見て、もう少しで襲いそうだった。」 「へ…?」 「我慢するの、凄く大変だったんだからな。あまりにもお前が可愛くて。」 あの時と同じような溜め息。 今は、そこに熱が籠っているのがはっきりと分かった。 …もしかしてあの時のって、私の醜態に呆れたからじゃなかったの? 「…美音。」 「っ…」 初めて呼ばれた名前に、全身に甘い痺れが走った。 そんな甘い声で名前を呼ばれたら、それだけで腰に力が入らなくなる。 「今日は俺の部屋に連れて行くからな。」 言うが早いか、あの時と同じように抱き上げられてしまった。 「課長、あのっ…」 「その呼び方はもうやめろ。プライベートで課長なんてお前には呼ばれたくない。…美音。分かるだろ?」 「んっ…」 耳元で囁かれて、思わず吐息が漏れてしまった。 …絶対態とだよね… 「美音、呼んで。」 「ゆっ…雄哉、さん…」 促されるまま名前を呼ぶと、一瞬で嬉しそうな笑顔になった。 それが嬉しくて、私まで釣られて笑顔になる。 「んっ!んん〜…!はぁっ…」 「…頼むから、あまり俺を煽らないでくれ。そんなに可愛い顔をされると、ベッドまで待てなくなる。」 急に奪われた唇から名残惜しそうに離れて行くのを、見つめている事しか出来ない。 聞きたい事が他にもあったはずなのに、もう既に何も考えられなくなってる。 そのまま彼の部屋に運ばれて、ベッドに優しく寝かされると、大事そうに抱きしめられた。 「…お前も久しぶりだろうし、優しくするつもりだが…余裕が無さすぎて正直自信がない。」 そんな風に吐息混じりに言われたら、こっちだって余裕がなくなる。 「いいです。…雄哉さんの事、好きだから。」 「ばか…必死に余裕を保とうとしてるのに、そんな事言われたら…」 「んっ…ふっぁっ…」 繰り返されるキスに意識が集中していると、急に素肌に触れた熱い手の平の温度に、体がビクッと反応してしまう。 服の裾から潜り込んだ手はゆるゆる這い上がって、2つの膨らみを下着の上から弄び始める。 「あっ…」 「…美音。服、脱がすぞ。…直接見たい。」 抵抗する間もなく下着ごと服を取り払われて、羞恥心に襲われる。 咄嗟に手に触れたもので上半身を隠すと、いつかのフワフワな手触りのクマのぬいぐるみだった。 「…美音、手をどけろ。というか、クマを離せ。」 もしかして、大事なぬいぐるみだったのかな。 「…ごめんなさい。」 「いい子だ。」 手離したクマさんは、何故かそのまま床に置かれてしまった。 あれ? 「まさか、ぬいぐるみに嫉妬することがあるなんてな…」 「…嫉妬?」 「俺の前に、美音のここに触れただろ?」 そう言って、もう硬くなっている2つの尖りを指で弄り始める。 そんな事に嫉妬するなんて、意外… 「んんっ…!」 「美音に触れていいのは、俺だけだ…」 「んっ…!はっ…やぁっ…」 舌で転がされて、反対側は指で弄られて… 自然と腰が揺れてしまう。 「ん…?下も触って欲しくなった?」 恥ずかしさに首を振って否定しても、そんなの嘘だと分かっているみたいに、そこに優しく触れてくる。 「ぁあっ!」 「…こんなに感じて…はぁっ…やばいな…本当に余裕無くなりそうだ…」 もう既に潤んでいたそこは、彼の指で更に溢れていく。 自分の耳にも段々大きく聞こえてくる水音が恥ずかしい。 「そんなにされたら…やぁっ…!」 「…凄いな。美音、もっと…もっと俺で気持ちよく…」 「やっ…音、やだっ…!ぁあっ…!はっ…」 「可愛いな…もっと可愛がってやりたいんだが…」 「はっ…んぁっ!んん~っ!」 「…美音。もう…いいか?我慢できない。」 放心状態の私に懇願するように言いながら、顔を覗き込んでくる。 そんな熱い瞳で見つめられたら、頷くしかない。 「なるべくゆっくりするから。はぁ…入れるぞ。痛かったら教えてくれ。」 「はっぃ…ああっ!」 「んっ…まずいな…はぁっ…入れただけで気持ち良すぎて…っ」 「んぁっ…あっ…我慢、しなくていい…です…あっ」 「っ…今そんな事言ったら、本当に優しく出来なくなるだろっ」 「ひゃっ…ああっ!やっ…あっ…!」 一気に激しく攻めたてられて、どんどん体の中が熱くなっていく。 「もっ…だめ…!」 「うぁっ…くっ…美音っ」 お互いに昇りつめて熱が解放されると、まだ繋がったままぎゅっと抱きしめられて、顔中にキスが降ってきた。 事後にこういうことをされるのは、初めてかもしれない。 「んっ…美音…好きだ…」 愛おしそうに名前を呼ばれながらキスをされるのは、すごく恥ずかしいけど、同時に凄く幸せな気持ちで心が満たされた。 「ほら、美音。一緒に風呂入るぞ。」 「む、無理です…」 「もう全部見ただろ。今更何で照れる?」 暗い部屋と明るい浴室は違うでしょう? 恥ずかし過ぎる! 「汗かいたし気持ち悪いだろ。風呂で流した方がサッパリするぞ。」 「そうですけどっ…」 何も一緒に入らなくても… 「恥ずかしいだけなら、このまま強制連行する。」 「ちょっ…」 いつまでもごねていたら、痺れを切らしたようにまた抱き上げられた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!