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「寒いわここ」
「脂肪がないからかな」
トオルは相変わらず細身で薄着で、相変わらず自分で体温を作れない変温動物のよう。そして僕は相変わらず、そんなトオルを温めたい。
「お風呂、一緒に入ろっかー」
「嫌じゃあほう」
「じゃあ抱っこ」
両腕を広げると、一瞬悔しそうに眉根を寄せた後で煙草を携帯灰皿に放り込み、そろそろと近づいて来る。華奢な腰を抱き取りぎゅっと力を込めると、やっぱり冷たいトオルの皮膚の温度を感じて多幸感と共に切なくなる。
昔と同じ。
「ヒゲ〜〜!ザリザリする!不快!」
「不快ってヒドイ」
「じゃあこっち帰って来る前に剃る習慣つけろっ」
僕は諦めてトオルの体を解放し、極細の柔らかい黒髪をクシャクシャと撫でつける。瞳を覗き込むと直ぐに目を伏せてしまうけど、そんな臆病な仕草も堪らなく愛おしい。
「チェックアウトがないからの〜んびりしようねー」
「言っとくがヤらんぞ」
「え」
「何が悲しゅうて親御さんの家でイチャイチャするんじゃ36にもなって」
「え───!」
じゃあ今からでもホテルに行こうと提案すると頭を叩かれた。僕にとって週に一度の愛の営みは必要不可欠な、トオルが存在する事への確認作業なのに………
しょんぼりしながら部屋に入ると、シーツに皺一つなくメイクされたベッドに押し倒された。
「こんなショボくれたおっさんでも抱きたいん?」
「勿論。でもちっともショボくれてないよ♡トオルはいつも綺麗だよ♡」
「マジで欧米化しやがってっ……」
最近漸く少し、トオルの噛み癖が復活してくれて何よりだ。
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