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   僕らの古巣、F市立大学。  僕は建築科、トオルは商業デザイン科の学生だった。三年から同じガウディゼミに籍を置き、週に一度顔を合わせるうちに仲良くなり、四年生の夏が来る頃には『恋人』に昇格していた。  卒業してからも三年近く遠距離恋愛を続けたけれど、トオルは25の時に『幼馴染みと結婚』してしまった。  繊細なボクはあの時の絶望とか悲しみとか苦しみとか寂しさとか辛さとかを思い出すと今も胸がギュッとなるけど、10年以上を経て、こうしてまた二人で過ごせる奇跡が起きた。  トオルが一人で抱え続けていた沢山の悩みを、僕が一緒に背負って癒す事が出来たらと心の底から思っている。 「一緒に行こ?バルセロナ。いや、その前に碓氷村ー」 「無理」 「釣れない……」 「……………」  当然と言えば当然だ。今の仕事は僕の恩師でもある櫻井先生の口利きで得たと言うし現在の住まいも提供して貰ったそうだし、義理を欠く訳には行かないんだろう。うん……当然だ。仕方ない。  離婚して直ぐに地元松山を出て、学生時代を過ごしたF市に戻って来たトオル。  事務所か八雲先生に連絡すれば僕との連絡は簡単に取れただろうに、『裏切ったのは俺やから』と……何も言わずに4年間ひとりぼっちで過ごしたトオル。  僕は確かに苦しんだけど、その何倍もトオルは苦しかったんだろうと思うだけで泣けた。今だって胸が痛い。 「トオル〜〜〜……」 「なんじゃっ!なんでウルウルしとるんっ!」 「愛してるよ。絶対幸せにするから」 「……………」  いつものように睨んで来たけど、トオルは僕の腕の中に潜り込んで「今が人生で一番幸せやもん」って消え入りそうな低い声で呟いた。僕はジーンとしてやっぱり泣きそうになってしまった。
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