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「スペイン料理ってパエリアとアヒージョと……イベリコ豚?」
「僕は八雲先生のコミュニティがホームだったから結構和食を食べてたかなー。ロメロ先生の所では毎日塩パンと煮込み料理」
「トマト煮込み?」
「オリーブオイル煮込み」
「それ、日本では揚げモンてゆーんや」
碓氷村からこっちに戻る週末はトオルとのデートが常態化しているけど、今回は手料理を振る舞いたくてお招きした。『うすいビーフ』及びうすいベイクの早苗さんが作ってらっしゃる『マッシュルーム』を是非とも愛しい人に味わって貰いたい。
「ワインちゅーか酒もキノコも嫌いや………」
「もしダメだったら吐き出してもいいからひと口食べて。ペリエ飲む?」
「ただの炭酸がいちいちオシャレやなあ」
「冷蔵庫にあっただけー」
宗くんが小さかった時みたいにダイニングテーブルの隣り合わせに座り、ペリエとカヴァで乾杯。定番のピンチョス、セゴビア風マッシュルームをふーふーして口に放り込んであげる。トオルは眉間にぎゅっと皺を寄せていたけど、ひと噛みした途端その眉間が開いた。絵に描いたようにパッと。
早苗さんのマッシュルームは小振りながら形が良く、味が濃くてクセがなくて非常に美味しい。僕はうすいビーフとこのマッシュルームの取り合わせがそれはもう大変に気に入っている。
「美味しいでしょ」
「うん……!」
「お肉は岩塩と山葵がオススメ♡」
「あっ……!うまっ……!」
愛しいダーリンの性欲と食欲を満たせるのは至福だ。どっちも蕩けるくらい色っぽい。目尻にちゅっとキスすると、トオルは「メシ食ってる時にヤメロ」と睨んできたけど気にしない。
「昔はそんなに飲まんかった……」
「だねえ。でもまあ郷に入れば郷に従えって言うし」
僕を最初にバルセロナへと導いたのはトオルだ。今は無理でも、いつかは連れて行きたい。そしていつかはトオルと二人で家具を作って、貧しくても穏やかな生活を送りたい。
いつまでも夢見がちって怒られそうだけど、トオルがその気になるまで焦らずに待ってるから。
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