星を操る堕天使の手は冷たいもの

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 知らないか、ふうちゃんだしね、とふっと笑った桐生くんの頭上で緑色に大きく光る流星がまた一つ。  「オリオン座流星群くらい知ってるよ」  …本当はよくはわからないけれど。  私の嘘なんかお見通しだろう桐生くんはしばらく笑ってた。  「ふうちゃんはさ、オレの知ってる人の中で世界で一番面白いんだ」  「は?」  「女の子なんて皆気取ってばっかで自分をよく見せようとしてオレに媚びるような声を出す生き物だけど、でもふうちゃんは最初からグーパンチかましてるような子で」  ちょ、ちょっと待ってよ。  「あれは偶然見られただけでっ!!」  「偶然でも、それでもね。自然にずっと話してくれた。嫌な時は嫌だと顔にモロに出してさ、あの顔ったらもう面白すぎて」  何かを思い出しクックと肩を震わす桐生くんに唇尖らしていると。  また一つ流れては落ち、桐生くんはそれに向かって何かを呟いた。  「何?」  「ん、願い事」  願い事?  クスリと笑った桐生くんは。  「ふうちゃんの眉毛が早くゲジゲジに戻りますように。あまり可愛くなりませんように。青山くんに取られませんように」    何なのよ…。  呆然と見上げていた先で鮮やかな線を描いて流れ落ちる大きな星。    「ずっとオレのこと笑わせてくれますように」  そんなバカな願い事、何だか可笑しくて涙が出るほど可笑しくて。  「寒いから温めてよ、ふうちゃん」  そう伸ばされた桐生くんの左手を。  「…仕方ないな」  鼻をグシッと拭った右手で繋いだら。  「汚なっ」  笑って、それから強く握り返してくれたんだ。  【完結】
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