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バタン…。
バスの扉が閉まると同時に彼女は話し出した。
「私、双子の姉で。」
「へぇ。俺の周りには双子居なかったな。」
「妹は勉強もおまけにスポーツも出来るんです。性格も優しくて。けど私はそこまでには至らなくて…双子で産まれたはずなのにこうも違うのかって思いました。」
「…。」
「私の母なんですけどね、ピアノの先生をしていて実家にはグランドピアノがあるんです。」
「凄いな。それが置けるなんて広いお家なんだろうな。」
「いや…そんな事はないんですよ。ただの普通のお家ですよ。」
「ただの…ねぇ。」
羨ましさをわざとにじませながらそう言ってみる。
「あはは…。それで私と妹は幼い頃からピアノで遊ぶ様になって何時かはピアニストになりたいと練習に励む毎日へと変わっていきました。」
「双子のピアニスト誕生…みたいな。なんか凄い格好良い。」
「響きは本当格好良いですけどね。でも。さっきも言いましたが妹は何でも出来てしまって気ずいた時にはもう私の上の上を行っていて。努力だけじゃ足らない。妹には才能がありました。羨ましい限りの。」
彼女の声のトーンが沈んでいく。
「私も負けない様に妹以上に寝る間も惜しんでピアノにのめり込む毎日。でもいくら鍵盤を叩いても妹の様な流れる美しい音色にはならなくて。そんな時。妹がコンクールで優勝したんです。周りからは妹と比べられて私はそんな妹をやっかんでばかりいました。」
やっかんでばかり…なんかその言葉、今の俺には分かる気がする。
「なんだか悔しくて妬ましくて。人間の陰の部分がもう丸出しって感じでしたねその頃の私は。でも流石にそのままじゃ駄目だと思って自分にも妹に負けない位の何かがあるはず…なんて手当たり次第色々と挑戦してみたんですけど今一つで。」
「そのまま何もしないでいるより前向きに挑戦出来たのは良い事だと思うな。結果的にそうだったかもしれないけど。」
「…なんですけどね。」
彼女の顔がパッと明るくなる。
沈んだと思ったらまた直ぐに戻ってくる彼女に俺は目が離せなくなってしまった。
そして彼女は続ける。
「ある時、妹が家を出たんです。」
「あぁ、ここら辺に居るってさっき言ってた…。」
「はい。」
早くその先が聞きたくてわずかな会話の間も惜しいくらいだった。
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