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帰ってきた女神
あれから、数週間が経ったころ、俺はいつも通りのつまらない毎日を送っていた。そんなある日、俺が忘れ物を取りに放課後の教室に戻ると、一人見慣れた姿がそこにあった。かつてつきまとわれた女神の本体である生身の女神燈子だった。
「ただいま。明日から通常登校できるようになったの。先生に挨拶に来たついでに、ラクをからかいに来ただけだよ。一緒に帰ろう」
女神が鞄を持って振り返る。ちょうど窓から夕陽が差し込んで女神を照らし出す。なぜか神々しい。
「俺と勝負して勝ったら帰ってあげようか」
女神とならばコミュニケーションが取れるようになってるんじゃないか。他の人とは相変わらず話すらもできていないけど。
「そこまでして、一緒に帰りたくないし、別にいいや」
そっけなく帰ろうとする女神。
俺と女神は夕日に照らされた廊下を歩き出す。そんな放課後も悪くない。
「ラクのおしりの穴、気になるなあ」
おしりの穴っておしり限定の穴だよな。壁の穴というオチじゃないよな。俺は自分の尻を思わず隠す。 やめてくれ。女神の細い指先が俺の尻に近づく。
少し苦笑いの女神。
「べつになにかしようなんて思ってないから。制服のズボンのおしりのところにほつれた跡があって、小さな穴になってるよ。遠目だと目立たないけど。直してあげようか?」
「まじか? 気づかなかった! 自分で直すから、もうまじまじと尻を見るのはやめてくれ」
やはり尻を隠す俺。
「相変わらず、かわいいなぁ。」
くすっとわらう女神は実態があって、普通の人間だ。宙に浮くこともできない。
俺と女神の攻防戦は続く。女神は暗木ラクをからかいの末に恋に落としてみたい。暗木ラクは恋には落ちたくない。そんなふたりのラブコメ頭脳戦が日常の中で、またはじまる。
暗木ラクになるのか、暗木ラクになるのか……女神次第になるのかもしれない。
(アン=暗、ラッ=ラク、キー=木)(暗いを取ると、ラッ=ラク、キー=木)
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