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長い回廊を抜けると、後宮の門が見える。
金の長い髪をなびかせ、薄紅色のドレスを纏い、颯爽と歩く姿は、遠くからでも一目で女王と分かる。
後宮の門番二人は、女王が通れるタイミングで門を開き、頭を垂れた。
「ご苦労。」
紗々羅は、どの者にも極力声をかけるようにしていた。
それが、歳若くして女王になってしまった彼女の処世術である。
「陛下、一星室様のところへ行かれますか。」
随行している衛兵が声を掛ける。
後宮の室は星の数で位が分かれている。まだ子供である室は、1つ星であった。
紗々羅は頷くと、一目散に一星室の居室に向かった。
一星室の居室の外に控えている侍従が紗々羅の姿を見つけると、
「陛下、ご参室!」と声を上げた。
その声で一星室が部屋から出てくる。
「陛下!」
まだあどけなさが残る少年は、紗々羅の訪問に満面の笑みを浮かべた。
「瞬!」
紗々羅は名前を呼ぶと少年を抱きしめた。
「陛下?…お疲れでございますね。中でお茶を飲みましょう。」
声変わりをしていない鈴の音のような声で瞬は、何かを察して紗々羅を労わった。
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