殺し屋

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 そう言って老人は、別の州にあるアパートの住所と、娘の名前を教えた。  若い男は少し考えたが、 「いいだろう」  と、受諾した。  ふだんの彼なら考えられないことだった。しかし今日は、ナンバーワンの殺し屋を倒して、自分がその地位に就いたのだ。彼の心は優越感と高揚感に満たされ、最後の頼みぐらいは聞いてやろう、という気になったのだった。  返事を聞いた老人の顔に、安どの表情が浮かんだ。 「あばよ」  若い男のコルト・ガバメントが、もう一度火をふいた。             * 「あの……パパから用というのは?」  ドアをあけて現れたのは、三十を少し過ぎたくらいの、貧相な女だった。足が悪いらしく、ステッキをついていた。  貧しい区域に建つ、古いアパートの二階だった。外では、「おれたちにも職を」と書かれたポスターが、木枯らしにちぎれそうになっていた。 「実は、あなたのお父さんから、これを預かってきまして」  若い男は、老人から託されたロケットペンダントをポケットから取り出した。  女がハッと息をのんだ。
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