1■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:希(了)

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 1年A組  珠希のおかげで、僕は目覚まし時計が鳴るまでぐっすり眠ることができた。  制服に着替えて、準備を終えてもまだアユは戻って来ない。  間に合うのかな。  ちょっと心配になってくる。  空也先輩ならきっとアユをちゃんと起こしてくれると思うけど。  早く戻って来てくれないかな。せっかく大丈夫って思ったのに、ひとりぼっちだとまた不安になってきちゃいそうで。  アユと話してたら気が紛れそうなのにな。  鏡の前に立ってもう一度リボンが変じゃないか見てみる。  中学は学欄だったから、見なれなくって変な感じ。  ヴー ヴー  携帯がテーブルの上で震えた。  珠希からのメールだった。 『おはよう。緊張してる? 平気だといいけど。昨日も言ったけど。そのままののんちゃんでいれば大丈夫だよ。きっと。困ったことがあったらいつでも連絡して』  ほんっとに、なんでこんなに僕によくしてくれるんだろう。  ぼーっと考えていると、ドアががちゃがちゃなって、寝癖頭のアユが戻って来た。 「大丈夫? アユ」 「うーん、頭ちょっと痛いし眠いけど。ノンは? 大丈夫だった?」  そう聞かれて、珠希が僕のおでこにキスしたことを思い出した。そしたら、なんか胸がどきどきして顔が熱くなる。 「ほら、早く用意して。寝癖すごいよー」  僕がそう言って笑うと、アユは慌ててバスルームに走って行った。 「シャワー浴びてくる!」 ***  僕らは早速掲示板に張り出されたクラス分けを見に行った。  きのうおじさんがふたりは違うクラスだって言ってたから、僕は覚悟を決めたつもりだったけど、アユはその話を聞いてなかったみたい。  そういえば、壁にかかってる絵とかをじっと見てたような。  僕がA組でアユがF組。離れるって聞いてはいたけど、これじゃ教室も離れ過ぎてて、学校の中でばったり会うこともないかもしれない。  僕ひとりでも大丈夫にならなくちゃ、って。  そう決心はしてたけど。  それでもやっぱり不安だな。  隣に立っているアユがめずらしく無口で、よけいに不安になる。  僕たち……大丈夫だよね。 *** 入学式が終わると、教室に入って出席番号順に席に着いた。山田だから、僕は一番後ろの隅だった。  周りを見てみると、やっぱり入学式って言ってもみんなすでに友達で。  みんなそれぞれに固まって話している。楽しそう……でも、僕はそこへ入っていける勇気がなかった。アユならきっとすぐに友達を作っちゃうんだろうけど……。  珠希はこのままの僕でいいって言ったけど。それじゃあ、僕はずっとここにひとりぼっちで座ってることしか、できないよ。  それに、みんな僕のことを見てなにか言ってるような気がする。外部生だから? それとも、僕に変なところがあるの?  そんなことを考えてたら、悲しくなってくる。  早く部屋に帰りたい。
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