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生徒会長・紫堂空也(しどうくうや)
食堂、と呼ぶには相応しくない、どこかの高級レストランのような所へオレとノン、珠希と空也で入っていった。
「ここが食堂だよ。土日はランチもあるし、だいたい毎日空いてるよ」
オレ達が入って行ったら、周りがざわめきだした。
オレ達、というより正確には珠希と空也。
みんな羨望の眼差しで二人を見ている。
う…ありえない。男子校だろ。
オレだってモテたし、バスケの試合じゃあきゃあきゃあ言われてたけど…。
まぁ、そんなことより、何食べようかな、なんて思っていると、一つの塊の中から、一人の華奢な可愛い子が近付いてきた。
「紫堂先輩、僕明日の御挨拶、楽しみにしてます!」
うえー。
「ありがとう」
空也がそれに答えて、にっこりと微笑んだ。
周りからほぉーというため息まじりの歓声がおきた。
嘘だ!
みんなこいつに騙されてるんだってば!
その子が頬を赤らめてうつむいて、去り際に思いっきり俺を睨んでいった。
ん?知り合いだっけ?
「…すごいですね」
「ああ、空也の親衛隊だよ」
「とか言って、珠希にも親衛隊があるんだぜ。ここ騒がしいからあっち行くぞ」
オレ達は場内の注目を受けながら、奥の個室へと移動した。
「うっわ、何これ。VIPルーム!?」
「生徒会長、寮長クラスになると人気が高くてゆっくり食事もできないからな」
空也が隣の椅子を引いた。
はっとして周りを見たら、既にノンは珠希の隣に座っていて俺は空也の隣に座らざるを得ない状況だった。
「どうぞ。お姫さま」
「オレ男だっつーの!それにちびじゃないからな!あんたらでかいかもしれないけど、オレだってこれからのびるんだから」
「じゃあ成長期の仔猫ちゃんにおいしいものを」
…完璧な笑顔をかえされたら、なんだかオレが一人吠えてるみたいじゃんか。
「猫かぶってんのはあんたじゃん」
チラっと空也の方を見て言ってやった。
「まぁそのことについては周りに言っても信用されないだろうから言っても無駄だ」
空也はニっと笑って言った。
やっぱりこいつ悪魔だ!
テーブルの上には豪華絢爛な料理が並んでいた。
向かいの席で楽しそうに話しているノンと珠希が羨ましくて肉をもぐもぐ食べながら眺めていると、空也が頭を小突いてきた。
「いてっ。何すんだよ」
「昼間のことは忘れろ。お前みたいなガキには興味ない」
「なんだよ、それ!オレだって男なんか興味ねーんだから…」
なんだよコイツ、やっぱ感じわりー!
ムカついて手元にあったグラスの中身を一気にあけた。
「あ!あゆ、それ…」
ゴクン
「ん?」
「お前ワインは楽しんで飲むもんだぞ」
呆れた顔で空也が言った。
「…ワイン?」
「どうしたの?」
「あの、あゆお酒ダメなんです…、手がつけられなくて」
「まさか暴れるとかじゃないだろうな…」
お酒?
「なんで?これジュースじゃん」
「え?あゆ大丈夫なの?」
「何言ってんの、真剣な顔しちゃって、ノンってば変な奴ー」
あはははは、ってなんかすごくおもしろい。
「笑い出しちゃったよ…」
「…だって、すごくおもしろいんだもん、何?この過剰装飾。伯父さんもわけわかんないものつくるよね」
「笑うところか?」
「だってさぁ、空也胡散臭いし」
「…空也先輩だろう。胡散臭いって…」
「きゃはは」
なんかおかしくっておかしくってたまらない。
「先輩、すいません」
「なんでノン謝ってんのぉ?」
「気にするな、ちょっと頭冷やしてきてやる」
「いじめないようにね」
珠希がにっこり笑って手を振ると、体が宙に浮いた。
ん? オレ、いじめられるの?
「やだぁ、ノン~」
空也に抱きかかえられて、個室から出てさっきとは違うエレベーターに乗った。
「ねぇ、空也~下ろしてよ。どこ行くのぉ?」
「オレの部屋。酔いさませよ」
「酔ってないってばぁ。ちゃんと歩ける」
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