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エレベーターを下りてライオンのレリーフのある部屋へ辿り着く。
「獅子!百獣の王らねー空也かっこいい~」
「あほの子か、お前は」
空也が呆れて俺を下ろした。
あれ?ちゃんと立てない。
「ほら、立てないくせに。水持ってきてやるから座ってろ」
支えられて空也の胸に顔をうずめた。
「なんか空也いいにおい~」
ぎゅむーって抱き着こうとしたら、空也に引き離された。
「お前なぁ、襲うぞ」
オレをソファに座らせて空也はキッチンへ消えて行った。
…広い。
オレ、なんでこんな所きちゃったんだろう。
一人でこんな広い部屋で暮らすなんて、なんてさみしいんだ。
気が付いたら、ぼたぼたと絨毯に涙が痕をのこしていた。
「あゆ…?」
空也が水の入ったグラスをテーブルに置いて、ソファに座り、オレの髪を撫でて顔を覗き込んだ。
「どうした?おい、泣くなよ…」
空也はぼろぼろと涙をこぼすオレを見てどうしていいかわからずおろおろとした。
「やだぁ、こんなとこ…」
「ええ??」
「父さんと母さんとノンがいる、狭くてもいいからみんな一緒のマンションがいい~」
「ああ、えっと…ううん…、その、さみしかったらオレがいるしさ、な?希だって珠希だっているだろ?」
ひくひくと、嗚咽がとまらないまま、空也を見つめて、抱き着いた。
「つーか、かわい過ぎだろ…もう無理」
空也はひょいっとオレを抱き上げてベッドに下ろした。
なんだかわからないまま、空也を見つめたら、急に顔が近付いてきて唇を塞がれた。
…キスってこんな気持ちよかったっけ?
お酒と泣いたので頭がぼーっとしてる。
自分の心臓の音が妙にでっかく聞こえて、空也の柔らかい唇の感触を確かめたくて、舌をのばす。
それに応えるように、空也の舌がオレのと絡まる。
…気持ちいい。
溶けちゃいそう。
こんなにキスがうまい人、始めてだ。
夢との狭間をふわふわといるようで、ずっとこのままいたいと思ったけど、…もう息が…泣いたから鼻がつまって……くるしぃぃ。
「うう…ん」
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