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…あれ?ここどこだっけ?
まだ半分寝ぼけてる頭できょろきょろと周りを見回した。
うん~?
オレの部屋ってこんなだっけ?
ごろんとふかふかのでかいベッドから転げ落ちて、部屋を出てみた。
ふかふかの絨毯を這ってリビングらしき部屋に行くと、薔薇のモチーフが埋め込まれた白いローテーブルの上にあるものにオレはまたもや釘付けになった。
ぐぅぅぅ。
…やばい。
なんだこれ?アニメにでてくるみたいなカップケーキ。
これくらいだったら食べても怒られないよな。
ていうか、オレの朝飯?
ちょっと少ないけど、うまそう。
ひとつ摘んで、ぱくっと食べてみた。
クリームチーズだ。
おいしぃぃぃ。
「…お前、懲りないな」
ついにみっつめのチョコチップを頬張っていると背後から今一番聞きたくない声が…。
口を押さえて振り向いたら、空也がシャワーを浴びたらしく、上半身裸で立っていた。
くそう。
昨日は服を来てたから分からなかったけど、綺麗な筋肉がほどよくついて引き締められた体は、男のオレから見ても惚れ惚れするものだった。
「いいじゃん、カップケーキくらい。金持ちなのにケチぃ」
「まぁいいけどな。それが例えロンドンで一日限定30個ずつしか販売しないカップケーキをわざわざ自家用機で取り寄せたものだとしても」
「…うっ!」
確かに、普通にカップケーキにしてはうますぎると思ったけど…。
「嘘だよ、いいよ別に。どうせ食うだろうと思ってたから」
「…ありがと」
…そういえば、昨日…
空也の顔を見た途端、昨日の出来事がカシャカシャと頭の中でスライドショーの様に蘇った。
「…あ、あのさ、昨日オレが泣いてたとか、誰にも言わないでね?特にノンには…」
「はぁ?泣いてたっけ?それよりさっさと部屋もどって準備した方がいいぞ。今日は入学式だろ」
「あ!そうだった!えっと、ありがと」
そう言って部屋を出たけど、空也は無表情のままネクタイをしめていた。
…なんだよ、あいつ。
嫌な奴なのか、いい奴なのかわかんない。
まだ寝ぼけた頭でなんとかまっすぐ走ろうと猛ダッシュで自分の部屋へ帰った。
走るには、足音を吸収してくれるという長所はあるけど、ふかふかの絨毯は足が何回も躓きそうになった。
「ノン!おはよー!」
「わぁ、びっくりした」
ちょうどノンがリビングで支度をしていて、オレがいきなりドアを開けたので驚ろかせてしまった。
「大丈夫?あゆ」
「うーん、頭ちょっと痛いし眠いけど。ノンは?大丈夫だった?」
昨日のこと、朦朧としか覚えてないけど、オレは空也に部屋に連れて行かれたからノンを置き去りにしちゃったんだ。
「僕はお酒飲んでないから。それに、珠希が部屋まで送ってくれたから…」
そう言ってノンがちょっとはにかんだように笑った。
…うん?
「ほら、早く用意して。寝癖すごいよー」
「シャワー浴びてくる!」
そういえばここの風呂って初めてだなぁ。
ゆっくり入りたいけど、今はそれどころじゃない。
とにかく急いでいたオレは頭洗って体洗って、素早く支度を済ませた。
「おまたせー」
「あゆーちゃんと髪乾かさなきゃ風邪ひいちゃうよ」
「いいのいいの、オレそんなやわじゃないもん。そのうち乾くって」
鏡の前でリボンを結ぶ。
そういや空也はネクタイだったよなぁ。でも伯父さんがくれたのは…これ、どうみてもネクタイじゃないし、ノンも蝶結びしてるから、これでいっか。
「できた!ノン、似合うー」
「あゆの方が似合うよー」
二人で笑いながら、部屋を出ると数人の生徒がちょうど学園に向かおうとしていた。
なんだか、気のせいか見られてる?
外部生だからかなー。
まぁいいけど。
でもなんか変な奴がいて、ノンをいじめたり手出したりする奴がいたらオレがやっつけてやるんだから。
そう思いながら、オレはいつもより胸をはってちょっと強気で学園へ向かった。
「あゆ、先クラス分け見なきゃ」
「ああ、そうだっけ」
あの人だかりがそうだろうな、掲示板にみんな集まってる。
オレ達も近付いて自分の名前を探した。
「あ、オレFだってー。ノンは?同じクラスじゃなさそう…」
「うん、僕Aだったよ…」
「えー、離れちゃうのやだー」
「僕だってやだよ」
そんなの、オレがノンを守れないじゃないか。
二人ともかなりテンションが落ちて、入学式会場の講堂へと向かった。
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