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悪魔のキス
「キス、した。空也と」
……。
……。
……。
「黙んなよッ、やっぱ話すんじゃなかった!」
アユは腕をどけてそう言った。顔が赤い。
キス?
アユと空也先輩が?
僕は嫌だとかそういうことを思ったんじゃなくって、とにかく驚いてなにも言えなかった。
「い、いつ?」
せっかくアユが話してくれたんだから、なにか言わなきゃって思って、やっと言葉を発することができた。
「んと……ここに来た日。悪魔に会ったって言ったじゃん。いきなり」
「あの時!」
それで、初めあんなにアユは空也先輩を避けようとしてたんだ。
「と、」
と!? まだあるの??
僕は内心びっくりしまくりだったけど、アユがすごく言いにくそうなのが分かったから、なんとか目をぱちぱちする程度に納めた。
「酔って、空也の部屋に行った時。空也にキスされて。俺すんごい酔ってたからさ、なんか気持ちーなーとか思っちゃって。あいつすごい上手いし。あんなキスはじめ……あ、ノン? 大丈夫か?」
顔が燃えてるみたいに熱くって、鏡なんか見なくっても顔が真っ赤だって分かった。
「アユ、空也先輩のこと好きなの?」
「好きぃ? 好きじゃないよ、あんな奴。たしかに、悪い奴じゃないとは思うよ。でも、なんか強引だしキスだってべつに俺からした訳じゃないし。うん、好きじゃないな!」
アユは一気に2つチョコを口に放り込んでそう言った。
それから、僕をじっと見て聞いた。
「なあノン。俺、男とキスしちったよ。軽蔑、する? きもい?」
僕は思いっきり首を振った。
「思わない。そんなこと、ぜんっぜん思わない」
「そっか」
僕が本当にそう言ってるのが分かって、アユは満足したみたいに笑って頷いた。
空也先輩と珠希が付き合ってるっていうのは、違うのかもしれない。
それでも、珠希は空也先輩のことが好きなんだ。きっと。
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