3■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:希(了)

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 嫌がらせ 「あぶなっ」  急に順平に腕を強く掴まれた。 「あ、りがと」  移動教室で階段をぼーっと上がっていると、階段を踏み外した。  正確には、誰かに突き飛ばされたのをはっきりと感じた。  最近、僕を悩ませているもうひとつの出来事だ。ときどきこういうことがある。  それに、先週は机の中にメモが入っていた。 『調子にのるな。おまえに久慈様はふさわしくない』  そう書かれていた。  そんなこと、言われなくっても分かってる。痛いほどに。 「なあ、大丈夫か? この前もこういうこと、あったよな?」  順平が心配げに僕を見ている。 「うん。大丈夫」 「大丈夫ったってさ。まだ怪我とかしてないけど、たまたまじゃん。明らか、狙われてる……やっぱ、久慈先輩のファンかな。けっこう根性汚いやつもいるし。ほんと、気をつけろよ? なんてったって、うちのクラスの卓球ヒーローなんだからよお」  シュウは、最後の方おどけてみせたけど、本気で心配してくれてるのが分かった。 「大丈夫、なるべく俺ら一緒にいるし。ひとりにしないようにするから」  順平が僕の頭を撫でた。  正直、最近は誰かにそういうことをされるのが、キツい。  珠希を思い出しちゃうから……。 「うん、ほんとありがとう」  いっそのこと、出てきて面と向かって言ってくれればいいのに。  そしたら、ちゃんと説明するのに。出来るのに。  僕は珠希に近付くことなんで出来ないって。  もう仲良くもしないって。 「なあ、希。どした? 大丈夫か?」 「え? うん。明日のこと考えて、ちょっと緊張してるだけだよ」  僕はそう言って笑ってみせた。  卓球はダブルスかと思ってたのに、個人戦で、各クラス代表はたったの1名だった。もし他に出たい人がいるなら譲ろうと思ったけど、手をあげたのは僕だけだった。  それに、卓球は人気がなくって、みんな僕を珍しそうに見た。  トレーニングルームに台があったから、僕はここ数日、サーブやスマッシュの打ち込み練習をしている。それに、順平とシュウがバスケの練習をする間を縫って、少し相手をしてもらっていた。  だから、ふたりは僕の実力を知っている。 「おう、うちのクラスこのままだと弱小だけど。希だけは1位の可能性あるもんな」  そう言ってシュウは笑った。 「なあ希。なんかあったんだろ?」  寮への帰り道。ぼそっと順平が呟いた。 「え?」 「ずっと希元気ねぇし。それって、あの嫌がらせのことだけじゃないよな?」 「ああ……んん」 「悪いけど。俺らけっこうおせっかいだから。話したくなるまで待つって限度は超えてんだよ。だから話せ。無理にでも。だって、2週間近く待ったもん。希が変になってから」  シュウの言葉に、僕は驚いて目をぱちぱちするしかなかった。 「おいシュウ、その言い方はないだろ、希困ってんじゃん」 「うっさい、俺だって困ってたんだ、ずっと」  シュウは吐き捨てるようにそう言ったけど、笑顔だった。  そうやって深刻な雰囲気にならないようにしてくれてるんだ。  だけど。話すっていっても……。そしたら、僕は珠希のことを好きだってふたりに話さなくちゃいけないし。  でも、2週間もずっとふたりに心配かけて、それに僕、もしかしたら感じ悪かったりとかしたのかもしれないし。  僕は覚悟を決めて、こくんとうなずいた。 「よし、俺の部屋来いよ」  そう言って順平は笑った。 「なあ希。諦めるのは早いかも」 「え? なんで?」  僕は今、2週間前のことを一生懸命ふたりに話したのに、伝わってないんだろうか。 「あのさ、まあとにかくこの話を聞け。ほら、順平、話してやれ」 「なんっで俺が?」 「いいんだよ、かわいい希の為じゃん。諦めないことの大切さを教えてやれよ」  順平はふうっと息を吐き出した。 「あのさ、希。俺好きな奴いるんだ。昔からずっと。けど、あいつは全然俺の気持ち知らねえから、好き勝手やってる。正直キツいけどさ。まあ、これは好きになった弱味だよな。それにあいつむちゃくちゃかわいいし」 「それって実のことだよね?」 「う、ぐ、ええなんで!?」  僕がそう言うと、順平は顔を真っ赤にしてソファに倒れた。 「あ、よく考えたらさー、悪い例だったよ。だって順平、報われてないもん」  そう言ってシュウが笑ったとたん、順平は僕を飛び越えて、シュウに掴み掛かっていた。 「うるせー! 俺だって頑張ってんだー!」
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