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告白
「ちょっと待って、どうしてそこで空也が出てくるの?」
珠希は不思議そうな顔で僕を見ている。
「だって、空也先輩なら珠希に合うって、珠希は空也先輩のことが好きだって、そう聞いたもん。だから、僕が珠希と一緒にいちゃいけない、って」
気がつくと、僕は言っちゃいけないことを口に出していた。
それと同時に、目から涙がぽろぽろ落ちた。
珠希は目の前で固まっている。
「ちょ、と待って、それ信じてたの?」
珠希の言葉に、僕は頷く。
「それで最近様子がおかしかったんだ? そういう噂あるのは知ってたけど、ぜんぜん違うから。僕、空也のことを友達以上に見たことなんて一度もないから」
今度は僕が驚いた顔をする番だ。
「あのさ。恥を忍んで言うよ。間違ってたらごめん……もしかして、僕と一緒にいたいって思っててくれたの?」
珠希は僕の顔を長い指で拭いながら聞く。僕は頷いた。その瞬間、また珠希に抱き締められた。今度は、さっきよりも力が強い。
「希……好き」
聞き違いかと思って、驚いて僕は思わず体を離した。
「ごめん、迷惑だよね。希が僕との友情を大切にしてくれてるの知ってたから、言わないつもりだった。少なくとも、こんなに早く言うつもりじゃなかった……でも、もう我慢できな」
「好きっ」
気がついたら、僕は珠希の言葉を遮ってはっきりとそう告げていた。
「え……」
「あ、の、僕、珠希のことが好き。友達っていう意味じゃなくって、あの、ずっと一緒にいてほしくて、あの、その、えと」
その瞬間、珠希のおっきな手が僕の頬に触れて、唇に柔らかな感触……。
それはすぐに離れて行ったけど、まぎれもなくキスだった。
僕が驚いて固まっていると、また珠希にがっちりと抱き締められた。
「どうしよう……たまんない、すごいかわいい。すごい好き。付き合ってくれる?」
そんな声が耳もとでして、また涙が込み上げてくるのをぐっと我慢した。
「珠希、大好き」
僕らは、頭がおかしくなったみたいに、好きってくり返し伝え合った。
「さ、少し横になって。試合の前に起こすから」
「うん……珠希、ここにいる?」
「うん。いるよ」
珠希はベッドのそばの椅子に座って、横になった僕の手を握ってくれる。
僕は目を閉じて、その暖かい手を感じて眠りに落ちた。
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